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以前から追いかけている、読書猿さんの『アイデア大全 』が、気づいたら売れに売れている(2017年3月8日時点で6刷)様子だ。


しかも、kindle版が(ビジネス書ではなく)哲学部門でランクイン。

なるほど、人文(科)学がビジネスに滲出してきている。

僕からすれば、
「どの科学も実務も、ギリシア古典から続く哲学史・科学史(と数学史や法学史あたり)抜きには語り得ないから、人文知がビジネスに滲出するのは当然の帰結で、ただただあるべき姿に戻っているだけでしょう」

と即答するのが本音なのだけど、出版の世界や現今のビジネス界からすれば、革命的な出来事なんじゃないかと思う。

日本のネット初の(ヘンテコな)ビジネスまわりの言説と、『アイデア大全』とは、対極の位置にある。『アイデア大全』が売れるのは、これに食傷気味だと気づけた人が増えてきていることの現れだと信じたい。


テンプレート的なネット発の人らの言説は、ストレートに言ってしまえば、「すごーい!」「たのしー!」と言ってくれるお友達を集めて、わかった気にさせる「薄めたモノの売りつけ」でしかない。見ていてホッとするようなアニメや文芸作品ならまだしも、彼ら彼女らがすなる出典を明示しない「閉じた世界」は、情報商材とどう違うのかが自分にはわからない(察するに、アーティストの「追っかけ」なのだろうと思うが)。




彼ら彼女らが「勝手に言わせておけ!」と無言で忌み嫌う匿名掲示板(2ちゃんねるの嫌儲板あたり)のほうが、まだ民衆本としての面白さがある。

罵詈雑言含めていろいろな要素を持っているが、用法用量を守って眺めるぶんには、自分の場合は読んでいて飽きない。数は極めて限られるが、掘り出し物としか呼べない面白い文献や論文が出てきたりもする。ただ、やっぱり99%は罵詈雑言なのだけども。


仮に無理やり好意的に見て「皮肉」だけを取り出すなら、さしずめ『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』や、宮武外骨の『滑稽新聞』のようなものになぞらえることができるだろう。

宮武外骨・滑稽新聞 第1冊
赤瀬川原平
筑摩書房
1985-02




 
どうしてもネット上の(ビジネス寄りの)言説が薄く見えてしまい、教養たりえないことについては、以下に書き表している。
 



少なくとも、アイデアを読み解いて実行する猿に対価を払うほうが、薄めて叫ぶだけの「けもの」よりは楽しい。




でも、「どうせ叫ぶしかできないならこれくらいやってよ!」とも思ってしまうんだけども。