人々を感動させる音楽と、点数を取る音楽は、どう違うのか。そこから学べることは何か。

daily2 素朴な疑問。

この時期になると、音楽を知ったきっかけとして、吹奏楽コンクールを思い出す。

「人々を感動させる音楽と、点数を取る音楽は、どう違うのか?」
という問いが、今もなお繰り返されていると、ふと直接知った。

生々しい結論から言うと、お金がない高校が吹奏楽で全国大会に出て、お金で楽器や人を集められる高校をコンクールの点数で打ち負かすのは、せいぜい20〜30年に一度くらいのペースが限界である。

事実から話すが、創部者が有名プロ楽団の奏者になろうと、そして同じ楽団の友人である奏者と頻繁に指導しようと、更にその人脈で全パートにプロの先生をつけて鍛えようと、限界があると実感する以外にない。

「お金がない+公立校+無冠の古豪+演奏効果の低いバッハや歌劇のアレンジばっかり」
という高校で、なんとか全国大会の舞台に乗った立場から言える結論がこれだ。

全国大会の舞台に乗ろうとも、全国大会にはたった1度だけしか出られず、ライバルである全国レベルの強豪数校には、コンクールの成績ではとうとう勝てずじまいだった。
(「勝てずじまい」と表現したのは、今は部活自体の規模が完全に縮小して、当時のような積極的な活動がままならない様子のためだ。今後の復活と活躍を心から期待したい。)

それでも不思議なもので、未だにツイッターなどSNSでは、自分の学校の当時の演奏を毎日聞いているという人を見かける。

それだけの、気迫や生命力を感じるからこそ、技術的に傷があろうと、人を引きつけるのだろう。ある種の怨念に引きつけられている言ってもいいのかもしれない。

また「これはアマチュア向けのコンクールに過ぎない」と、ごく狭い世界だけのお話という事実にも強く気付かされた。

不用意に吹奏楽コンクールで活躍してしまったために、そこが人生の頂点であっけなく終わる人が、数多くいる事実があるのだ。

お金をかける強豪の他校において、全国大会に毎年出て、卒業した人たちの事実を挙げよう。
コンクールやジョイントコンサートで、毎度毎度、もはや名物のように迷惑に叫ぶ卒業生が毎年いた。
志望している学校への進学に、ひたすら大失敗する卒業生もいた。
それどころか、プロ以前に音大に行く基礎(ソルフェージュ・オケスタ・協奏曲の演奏力)がないくせに、ピッチ(音程)とアインザッツ(曲の縦線の揃い)だけで講釈を垂れたりする人もいた。
この事実を知って「人によっては行き場のない泥沼が続くのだろうなあ」とか「身を滅ぼす世界なんだろうなあ」「私服校の自分らと違い、従順なままなんだろうなあ」と感じたのは、当時の自分が周囲を生意気に論評していたから、と説明がつくかはわからないが、得てしてフラットな目線で見ていたのは事実だ。

そういえば、プロ楽団奏者かつ部活の創部者の先生と、完全に腹を割って話せるようになった大学1年生のとき、「先生方は第一線の先生じゃないですか!」と言ったところ、苦笑しながら「自分らなんて二線だか三線がいいところだよ」と返された。

苦笑のうちに「フラットな目線で本音を言えた」という嬉しさが、先生方からチラッと見えたように思えた。

今だからこそ、その表情からふと気づかされたことがある。
きっと本音では「ここは狭い世界なんだよ」と言いたかったのだろう。

思い返せば、吹奏楽コンクールで全国大会に出るような生徒の99%の常識からすれば、合格どころか全くかすりもしない大学進学の進路をあっさり通っていく側にいたのである。同じ高校の卒業生としては常識であっても、吹奏楽コンクールの中では非常識な事実だ。しかも私服OK、髪の色を茶髪にしようが金色や赤や青にしようが何も言われない…という、これまた吹奏楽部で言えば完全に非常識の側だ。
「君等は、世界を押し広げる側として、外に巣立って行ったんだろう?」
高校の先輩であるプロ奏者の先生が、そう思ったとしても、同じ学校の卒業生としては自然なことである。

ここから得られる教訓は何か。
「怨念とも言える前向きな気迫は、世界を押し広げ、人の心を自在に動かす」
という事実である。

いくら点数を取っても、生き生きした面白みがなく、聞き継がれもせず、それどころか身を滅ぼしてしまうなら、音楽としてどころか、人として死んでいると言うしかない。

客観的かつロジカルな指標が、主観的で自由な熱量に押されてしまう瞬間は、人間にしか作れない痛快な生き様なんだよね。

..遠藤武

遠藤武(えんどう・たける)
グロースハッカー。
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■遠藤武のやっていること■

・経営トップ向けに「仕組み化」のプライベートアドバイザリーを手がけています

・中央経済社『旬刊経理情報』誌にて、仕組み化とデータ分析に関する見開き2ページ連載記事を、2022年7月より月2〜3回ペースで執筆しています
(2024年8月に50回を超え、書籍化企画を進めています)

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