一流の下限を知っていれば、三流の違いが一発でわかる。
これは究極のドメイン知識でもある。
例えばコンサルタントを名乗って経営戦略を司るコンサルティングを行うなら、一流と呼んでいい下限は、
年売上高数千万円〜数億や数十億円、数百億〜数千億円から数兆円ないしそれ以上の企業の経営について、
一次情報として、数字や市場動向だけでなく、成長をリードした具体的実績、企業内外のヒト・モノ・お金・情報・テクノロジーの動きの問題点と成長のカギに目星がつくこと。
ここには、いわゆる「プロ経営者」と呼ばれる存在も含めていい。
実際に活躍している人や、文献や本で書かれたことや、私が立ち向かった一次情報から炙り出された事実に基づいたドメイン知識の通りに言うと、そうなるのである。
更に詳しく掘り下げよう。
一言断っておくと、私はコンサルタントもプロ経営者も対外的に自称したことはただの一度もないし、これからもそう名乗らないだろうと断言できるが、
偶然にも上記のニッチな領域をプロダクト構築やFP&Aや急成長リードから全て経験して「仕組み化」を手がける立場から、ありのままの事実と特徴を書こう。
キャリアや成功は一つに定まらないが、経営全体にわたる戦略分野のコンサルティングやコンサルタントと呼ばれる仕事について、誰もが頷く一流の下限の枠内に収まるポイントは以下の通り。
売上高数千億円から兆円単位:
大企業向けコンサルやプロ経営者に目立つのが、この規模に関わるケースだ。
売上予測やEBITDA(金利・税引・償却・償還前の利益=純粋に事業で稼ぎ出した利益)やFCF(フリーキャッシュフロー=自由に使える現金)だけでなく、M&Aや子会社・孫会社の動向の管理が関わってくる。
近年だと、デジタル関連やAI関連の新規事業立ち上げが、役割に加わることになる。
これを出来るのは押しも押されもせぬエリートサラリーマン(外資コンサルティング会社経験者)だが、ずっと大企業だけだと、小さい商店の運営もできず、なんちゃって独立のコモディティにもなりかねないので要注意。
デイリーレポートで何度も繰り返している通り、FP&Aができて、統計学やアナリティクスができる上で、マネジメントができると強い領域。単にコンサルティングを経験した層よりも珍重される。
(対象外: ITシステム導入や業務プロセス構築しか経験がない、自称コンサル・実態SEで、事業会社目線でのマネジメントはからきしダメ…な御用聞き代行業も少なくない。)
売上高数十億円から数百億円:
コンサルよりもスタートアップに所属したりと、サラリーマンで急成長を経験する人は、じわり増えている様子だ。
自分の場合、数年程度で年売上40億円を超えて50億円に達するレベルの急成長リードを経験した(去って数年後に100億円手前に迫ったそうだ)が、30代前半から中盤までで相応の立場でこのレベルの急成長を経験しておくと、その後のキャリアでは二度と困らない。
逆に言うと、プロ経営者やコンサル止まりでは「ゼロ立ち上げから年売上高50億円や100億円台への成長」は経験しづらい。
というのも、この経験をしてしまえば、それだけで一生食べていけるゆえに、わざわざプロ経営者を名乗る必要などなく、そこらの全てのコンサルなど軽く眺め下ろせるためだ。
とはいえ、2桁や3桁億円でとどまるというのは、成長の観点からはちょっと物足りないところでもあるが。
経営課題が増え、マーケティングやブランディングやマネジメントについて、ベタなスキルが求められる規模がこの領域の特徴だ。
(対象外: 経営課題の多さと、規模の大きさによる支払い余力が出てくる企業が増える。この規模をターゲット顧客にした講師業が出入りしたり、自称学者や自称有名人のご威光を演出したサービスが目立つようになる。)
売上高数千万円から数億円:
この領域「だけ」しか経験がないコンサルやプロ経営者は、キャリアとしてはちと厳しく、そもそも一流の下限の枠内とは言い難い。
コンサルタントや(「プロ」を冠さない)経営者を名乗る人の9割はこの領域プラスアルファで、単価の安い講師業や代行業をずっと行っているのも、また事実ではあるが。
ただし、淡々と経営者をいざなって仕組みを作り、成長や事業再建や新規事業立ち上げに持ち込めれば、フィーが一気に跳ね上がり、心から喜ばれるのもこの領域。
独立して仕組みを作って成長するなら、必ず通過することになるし、1人だけの場合も粗利次第ではかなり裕福に過ごせる。
一流にとってはスタート地点でもあり、通過点でもあり、心底充実できるエリアでもある。
実のところ、過去に在籍した企業名を振りかざしている人は、この目線が足りていない知識不足か、
あるいは知識不足でもできる小粒な代理店業(=代行業)という実態が極めて多い。
現実解。
上記は全て、直面した事実に基づいたものをありのままのドメイン知識として書いているに過ぎない。
自分の仕事は「仕組み化」と、その逆である「分析」であるため、
「コンサルティング」「コンサルタント」という分野についても、コンサルティング会社に所属せずそれらを起用する立場を有利に使い、知見として切り出しているだけである。
用いた要素と言えば、統計学とリサーチアナリストとしての知見、複数の事業会社のFP&A、複数の新規事業立ち上げ、マーケティングとマネジメントの経験だ。
(だからこそコンサルティングを行う人や組織の弱点をすべてカバーし、成長に向けた仕組み化の指南を行っているのだが。)
その上で「コンサル」と他称されることが非常に多いため、仕事をする上での基準を、混じりっけなしの本音で書き切った。
そもそもだが、呼び名も自称一流も本質ではなく、実績と事実だけが本質である。
要はコンサルタントやプロ経営者と呼ばれる人たちは、一流の下限を果たす実力を付けきれず結果が出せない人が大多数であり、結果が出せる人はとてもとても少ないニッチ産業ということだ。
ということは、圧倒的な実力をつけて一流の下限を全てカバーしてレベル上げすれば、実はブルーオーシャンなのかもしれない。
現に一流の下限で圧倒的な実力をつけて、コンサルタントをやめて、大好きなことに集中できている「超一流」もいるくらいだから。
追記。
コンサルティングやプロ経営者の紙一重のお隣に、事業価値を上げていく投資家という人たちもいる。
自分が一番最初にやっていた仕事は、投資家向けに、投資案件の事業価値評価を行う事業の立ち上げだった。
財務モデリング(キャッシュフロー算定による時価評価)も、統計学による取引事例のモデリングも経験したけれど、後々コンサルティング経験者は思いのほか数字には強くないとわかった。
コンサルタントをやめた超一流の人の本を読んでも「思いのほか数字に強くない」という事実が書いてあることが多いのは、そもそも別種目ということ。
追記の追記。
これで最後。
サラリーマン時代のアメリカ人上司から一次情報として知ったが、FP&Aやモデリングから、統計学を用いた売上予測・需要予測まで行う人は海外には当たり前にいる。
M&Aが日常茶飯事である北米だと、コンサルティングやプロ経営者以前に、数字に強いことが必須だ。
日本では別種目と書いたけれど、本質は同一種目だという流れがようやく押し寄せてきている。
コンサルタントやプロ経営者と呼ばれるニッチな人たちの実力が、ドメイン知識として捉え直すと明るみになり、一流と三流の差を更に広げていくことになる。
boxcox.net、遠藤武。