「やらないこと」を決めること。
あれもこれも、と足し算し過ぎると、
自分の価値が薄まってしまう。
現実解。
特に年売上高1〜3億円までの企業の経営者さん
(場合によっては10〜30億円規模まで)に多い現象だが、
「あれもやらねば」「これもやらねば」と、
非常に真面目に、何もかも足し算してしまい、
何もかも追いつかなくなるという状態がある。
これを打破するには、「引き算」に着目する必要がある。
真面目で実直なことは、非の打ち所がなく正しいことであるのだが、
単に正しいことを追求するだけでは、その他大勢止まりとなり、成長はおぼつかない。
サラリーマンであっても、経営者であっても、
本音ベースでの仕事は実のところ、
「もっと負担を減らしたい」とか「もっとラクに動きたい」のように、
出来るだけラクをして、工数やコストを減らすことに意味がある。
製造業に関わったことがある人なら経験があるかもしれないが、
工場や生産現場で工数の低減を行えば、報奨金がもらえることが少なくない。
これは、原価低減や工数低減が、そのまま粗利の増加に跳ね返るためだ。
企業にとって、営業成績の向上と同じくらい、喜ばしい成果だからである。
日本の製造業の場合、このような「引き算」の思考が、
非常に多く取り入れられ徹底されてきている事実は、
もはやここで語る必要もないくらいだ。
一方、事務方や営業や、その両方を司る経営では、
日本の伝統的な企業の場合、ほとんど「引き算」の思考は意識されていない。
根性主義に走ったり、やるべきでないことやめずにいたりと、
成果から逆算した発想が持てずに、やらなくても良いことに手を出し、
足し算し過ぎに邪魔され、良いところを自壊させてしまっているケースがほとんどだ。
外資企業全般を両手離しで褒め称えるつもりは毛頭ないが、
グローバルで最前線を走る外資企業では絶対にありえないほど、
生産性を上げるという工夫がなされていない事実は、素直に認める以外にない。
(更に言えば、投資銀行など毛並みの良い外資企業では、日本人と多く接する業界ほど、
「外資っぽさは全て捨てろ」「日系最大手を意識しろ」とゴリゴリ叩き込まれる習慣があり、
「外資っぽさを引き算して、日本市場に意図的に溶け込むことで、生産性を極限まで高めている」という事実があることを付け加えたい。)
経営者に限った話ではなく、サラリーマンにも言えることだが、
「引き算」でやらないことを決めてこそ、価値が研ぎ澄まされるのだ。
サラリーマンが昇進するということは、マネジメントを担うことであり、
それは「権限移譲する」「仕事を部下に任せる」ことで果たされる。
現状から引き算することで、昇進というステップが作られるのである。
経営者が成長するということは、同じくマネジメントを担うことであり、
それは「自分がいなくても仕事が回る」ことで果たされる。
現状から引き算することで、成長というステップが作られるのである。
ステップアップすることでしか、価値は研ぎ澄まされない。
その腹決めさえ出来ていれば、何を引き算していくかを、
次のToDoに盛り込むことができると考えるが、いかがだろうか。
boxcox.net、遠藤武。