紙処理の多いレガシー産業ほど、DXで伸びる。

DXの挑戦状。

実はレガシー産業というのは言い方が適切ではなく、本来なら「伝統産業」とでも言うべきである。

というのも「レガシー産業」という言葉自体が、わざわざ資金調達してマーケティングに高いお金を投じて人為的に認知度を高め、SaaSのような商品を展開するという、「DX産業」の方言だからである。

あらかじめ断っておくが、私は大規模な資金調達を行なって広告費を投入するビジネスモデルそのものの是非を問いたいのではない。むしろもっとやるべきだと強く認識している。

問題は、各社がこぞってあちこちで資金調達して広告費を投入し、「DX産業の論理」でバラバラにサービス展開して競争するがあまり、「レガシー産業」「伝統産業」の本音の悩みに寄り添い切れないという実情がある点だ。

 

前置きが長くなったが、レガシー産業がDX化を推進することで伸びしろを出せる理由は、レガシー産業側の慢性的な勉強不足の放置にある。極めて人間臭い話だ。

売上高で数10億円後半から100億円くらいまでの企業の一時情報を見ていると、「Excelで各部門や各支店の売上高を集計して、対前月比でどうなったかをパワーポイントに出して…という手作業を、2〜3週間かけて毎月がんばってやっている」のだが、この時点で「アウト」である。

これの具体的に何が「アウト」かを言うと、

・Excelではなく、BIツールやクラウドERPで完了させるべきという知識がない

・知識がないゆえに、部門や支店ごとにデータの掘り下げや分解できない構造のままである

・データの掘り下げや分解できないゆえに次の打ち手となる切り口を出せない

・それどころか集計と作成に数週間かかり「資料作成のための分析」どまりで遅きに失している

という指摘が可能だ。

要は、スカイダイビングで着地したあと(=地面に激突したあと)にポン!とパラシュートが開くかのごとく、コミカルなギャグ漫画のような状態なのである。

「ギャグマンガと一緒にするなんて!」と思う人がいるかもしれないが、果たしてデータの利活用やDXにおいて、ギャグマンガのオチのようなパラシュートのごときデータの着地を「うちは大丈夫」と即答できる企業はどれくらいあるだろうか。

そして、このパラシュートのリテラシーのない状態を、自覚症状なしに構造的・結果的に放置してしまっている企業はどれくらいあるだろうか。

実際にどれくらいの企業がそのような状態に陥っているかは大規模調査に委ねるとしても、レガシー産業がデータの扱い方やその周りのシステム関連の知識を仕入れるほうが、おそらくスカイダイビングよりははるかに難易度が低いだろう。物理的に空に飛ぶ必要はなく、情報処理としてクラウド(空に浮かぶ雲)のサービスを用いて、データを橋渡ししていく発想があれば十分であるのだから。

 

実のところ、日本の企業が抱える不利な点は「データの利活用」「アプリの利活用」「そのアイディアの建て付け」くらいしかなく、現場スタッフが優秀であるゆえに、経営の腹決めしだいで伸びしろが見いだせると言っていい。

35年とちょっと前に国産家庭用ゲーム機が日本を席巻し始めており、今やマンガ・アニメ・ゲームという日本の伝統的なエンタメの三本柱に据えられている。ということは、日本の過去30年以上の原風景に、ゲーム経由でコンピュータがセットされて来ていることになる。

この事実にヒントを得れば、レガシー産業のDX化とは、15年くらい前の『脳トレ』でコンピュータゲーム産業が盛り上がったように、ちょっとしたゲームのように始めてみるくらいでいい。

「ゲーミフィケーション」という言葉は既に形骸化した感がある。

いっぽうでデジタル化とはゲームのパラメータのように「自分の(自社の)こうげきりょくは25、すばやさは21」と、KPIや経営指標といったデータで可視化していくことにある。

現場に紙処理が多いケースであればあるほど、ゲームの攻略本を片手にデータとにらめっこし、経営指標を見定め、打ち手を作って実行していくだけで「経験値稼ぎ」による業績成長ができる。

「ゲーム」=「データの利活用」という切り口から、レガシー産業を鍛える。これはそのまま現実解として機能しうるし、純粋な面白さでも勝負できる分野だとさえ言えてしまうが、いかがだろうか。

boxcox.net、遠藤武。

遠藤武(えんどう・たける)
グロースハッカー。
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■遠藤武のやっていること■

・経営トップ向けに「仕組み化」のプライベートアドバイザリーを手がけています

・中央経済社『旬刊経理情報』誌にて、仕組み化とデータ分析に関する見開き2ページ連載記事を、2022年7月より月2〜3回ペースで執筆しています
(2024年8月に50回を超え、書籍化企画を進めています)

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