「企業の規模ごとに、IT領域やデータ分析でどんな違いがあるのですか?乗り越えるべき壁はありますか?」
これもよく聞かれるので、特徴となるキーワードと共にまとめてしまおう。
◆(1)最大手企業
(※グループ全体の年売上高200億円〜数千億円以上)
(※外資FP&AはIT強者。日系FP&AはIT強者かどうか五分五分)
・SAP, Oracle Hyperion, 英語公用語, 外資FP&A
・Teradataなど大量データを扱うDWHがある
・SAPとDiva連結決算を用いている(日系最大手)
◆(2)中規模から大規模のIT強者
(※年売上高30億円〜200億円の非IT企業)
(※規模の要件を除いた場合、IT企業はここまでの要件が最低ライン)
・TableauほかBIツールを使っている
・SalesforceなどCRM/SFAツールを使っている
・統計学(多変量解析や機械学習)の知見を軸に業績の予測や分析を行っている
・CIO/CTOやそれ相当のチームがあり「データ基盤」や「技術的負債」などの概念を活用や意識している
・OracleNetSuiteなどのパッケージを用いている(SAPが規模に合わない年売上高数百億円の場合)
・MDM(マスタデータマネジメント)を行い全社でデータ管理と分析基盤を統一している
・Teradataなど大量データを扱うDWHがある(データドリブンな分野の場合)
◆(3)小規模のIT強者
(※目安:年売上高5〜30億円の非IT企業)
・API連携を活用している
・Zoho, Kintoneなどの売上管理ツール(CRM/SFAやその簡易版)を用いている
・SaaS全般(freee, マネーフォワード, ジョブカン、Andpadなどの基幹業務SaaS), Kintoneなどのノーコード・ローコード全般を用いている
◆(4)IT弱者・知識不足
・時代錯誤な手組みシステムでスケールしない
・会計は税理士に丸投げでクラウド会計の知識ゼロ
・ウェブ系特化やSEO対策代行だけの企業
・SaaSを出自としない昔ながらの中小企業向けシステム全般
・リテラシーなし,手作業, 神Excel(csvやExcelやスプレッドシートで個別バラバラに対応)
ありのまま並べると、このような具合だろう。
これらは大企業だけ・中小企業だけではわからないマニアックな世界とだけ断っておく。
(1)について、SAPは「エスエーピー」と読む(「サップ」ではない)。これはドイツの会計システムメーカーの会社名だ。
上場している大会社の場合、そもそも会計システムはSAPが必須であり、そうでない場合は上場企業として投資家から信頼されない…という実態の商習慣がある。
SAPは事務部門から使いにくいと言われているが、事務部門の使いやすさではなく、監査目線でセットされているのが実情だ。
これは売上高が兆円単位や数千億円の上場企業の世界の話であって、スタートアップはここに含まれないが。
FP&Aを行う場合、SAPとOracle Hyperion(HFM, Hyperion Management System)という組み合わせが基本である。
FP&A目線でみて、この組み合わせで不便を感じたことは一度もなかった。
ただし、(2)の台頭で必ずしもSAPとHyperionが全てではなくなってきた。
データ基盤をつくり、Tableau等のBIツールや、PythonやRで分析やモニタリングを行い、動向の読み取りと施策出しをゴリゴリと行うのである。
いわゆるIT大手やSaaSのスタートアップはだいたいこれである。
この(2)のレベルだと、まず間違いなくIT音痴はいない。
ただし、強権発動型のFP&Aは(1)に比べると目立たなくなり、優秀なはずのデータサイエンティストが権限不足であまり楽しくなさそうに過ごすケースが多い。
どちらが良いか客観的な答えはなく、一考の価値がある。
(3)と(4)はセットでみていこう。
(3)は、まず全ての人と企業が目指すべき下限だ。
SaaSで極力手作業をなくしていくことがポイントである。
それ以上でも以下でもなく、システムを制するものが組織を制するのだ。
そして(4)は、IT音痴の最たる状況である。
システム音痴は、もう生きていけない。
とにもかくにも、知識不足を悔い改めるしかない。
一刻も早く、知識不足を脱し、(4)をやめて(3)に移るしかない。
平成までで流行っていた、営業マン主導の情報システム屋さんは、何もできないとバレた。
日商簿記3級くらいの知識すらない場合、古臭い税理士の先生に「うちはクラウド会計はできません」と言われて嫌な思いをする。
社長のケチケチ発案でVBAの神Excelしかなく、何をどう頑張ってもスケールしない。
スマホが手元にあるのに、Excelや手入力のバケツリレーをやらされる。
こういう「嘘でしょ?」という壁の状況は、令和の今でも数多くある。
現実解。
ちゃんと卒業すべきことを卒業して壁を乗り越えていけば、これらはノビシロでもある。
知識不足をなくすことで解決の糸口が得られるから、そのためにもいったん全体像を知っておこう。
ボックスコックスネット、遠藤武。