経営 その32 〜 経済分析レポート。

daily1 商い。

物事を調べることについて、ビジネスでは軽んじられることが多い。
ただし、経済動向を分析したリサーチレポートは重んじられる。

調べることそのものについて、お金の動きが明確に見えない「静かな動作」であるために「ただ調べるだけなど、レベルが低い立場の人間がやることだ」と誤解されているのだろう。

私はファーストキャリアとして、一次資源(鉄鉱石、石炭、穀物、油糧種子、原油…)の海上貿易量の予測や、各種の価格予測を行っていた。
その立場を卒業した今では、このようなリサーチが意思決定にどのような流れで価値を出すかはっきり見えてしまっている。
(参考資料。こういった日銀のペーパーや、農水省のペーパーや、日本語圏には無い切り口の洋書や、今や古いモデルの本を用いて、R言語を叩いていた。ウェブサイトの名付けも、このときお世話になったモデルがきっかけだ。)

リサーチがインサイト(洞察)として、意思決定に役に立つ流れは、以下の通りである。
・徹底的に調べ込んで、先行研究やデータや事実から仕組みを構築し、生じうるシナリオを描く。
・シナリオのアップデートを状況に応じて都度行い、望ましいアクションにつなげる。
・アクションを通じ、お金の動きを継続してプラスに持ち込む(あるいは、マイナスになるケースに備える)。

たったこれだけでしかない。経済活動を行う上で役立つリサーチとは、個人だろうと企業だろうと、この前提に従った冷淡で退屈なものでしかないのである。

逆に言えば、それ以外の「退屈でない=感情を煽る」類のリサーチは、
正直に言って全く役に立たない。鳥のさえずりを聞いていたほうが有益だ。

それはなぜか。景況感が悪化しようと、政治動向が激変しようと、最終的には身の安全とキャッシュフロー(仮に経済が完全に崩壊したとしたら、衣・食・住)が確保できれば、人間はどうとでも生きられるからだ。

興味がないので大して語れないのだが、そのような「退屈でない=感情を煽る」類のリサーチのような何かは、あくまで「事実に即した冷淡なインサイトではなく、煽って記事を流布させるための記事」でしかない。これは、記事を売るライターだろうと、記事をSNSに上げるだけのインフルエンサーだろうと、全く共通している。

仮に煽る意図がなくとも、結果として人を寂しく煽る記事に巻き込まれるくらいなら、一歩でも前向きになれるようなインサイトや現実解に親しんだほうがメリットがある。元気の出るものを読み、かつ回避すべきリスクについての知見も取り込めば、それで全く事足りる話だ。

リサーチだけを行う側をやめて、わかったこと。
このような「リサーチと煽り」について、多くの人も企業も、あまり意識していない。どこからどう見ても、この一連は、人にも企業に必要であるにも関わらず、だ。

楽観しろとも悲観しろとも言うつもりはない。煽り記事が予想する事象が、どれくらいの率で実現するかを、楽観せずに見定めてもいい。一方、大多数が困惑する状況や、平均から外れた歪みにこそ、その悲観のウラに価値があることに気づけないのでは勿体無い。

現実解。
煽りもリサーチも、常に冷淡に見つめる。

自分とその周囲が、どれだけオーバーシュートして誤差を出しているかを、
常にレンジを見積もって見定める。

自分とその周囲が、どれだけ隠れたチャンスやリスクを見過ごしているかを、
常に楽しく想像する。

そのようなリサーチからのインサイトにこそ、
成長とリスク回避のチャンスが隠れているんだよね。

..遠藤武

遠藤武(えんどう・たける)
グロースハッカー。

↑詳しい自己紹介は上記リンクを参照。

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