分析:価格の付け方。

daily11 スモール分析。

「自分のやっているビジネスは、市場の相場が不明瞭です。不用意に『売らんかな』にしようとすると、本当にやりたいわけではないことをやることになりそうで、二の足を踏んでいます。とはいえ粗利をコンスタントに得られるようにしたいです。一般にどのように値決めすればよいのでしょうか。」

 

このような悩みを持つ経営者さんから、相談や質問を受けることがあります。

その答えはシンプルで「払っても良いと思ってもらえる比較軸を用意する」の一点に尽きます。

おにぎり1つ取っても、1個100円くらいのコンビニのおにぎりもあれば、1個300円くらいのおにぎり専門店もあります。極端な例だと、1個2,000円を超えるおにぎりを出したことで騒がれたお店も過去にありました。

「値段が高い=売れない」「値段が安い=売れる」というのは、そもそも現実解としては成り立ちません。

売れる売れないではなく「払ってもいい」で値段は決まるのです。あくまで買い手に主導権があります。

こう書くと「ということは、売り手側には打つ手なしか…」と思ってしまう方がいらっしゃるかもしれません。これは間違いです。

「払っても良いと思ってもらえる比較軸を用意する」というのは、おにぎりのケースで言えば、コンビニと軸が違う中身と思いを伝えられれば、「払ってもいい」どころか「欲しい!」となるのです。

要は「家ではとうてい作れないorとても作りづらい品質である」「コンビニでは食べられない」かつ「そもそも単に美味しい」という軸があると、買ってもらえるのです。あるいは「お寿司を買わずに高級おにぎりがいい」とまで言い切ってもいいと思います。

不用意に「コンビニで売っているから、それくらいの値段でいいや」とか「チェーン店の価格くらいでいいや」としてしまうと、大きく組織化されたお店はスケールメリットがあるゆえに、小規模なビジネスは粗利が取れず一発で負けます。

ではなく、小規模ゆえに価格勝負は捨て、製造できるキャパや席数が少ないことがプレミアムになるよう、一点突破型のゲリラ戦を想定するのです。であれば、純粋にクオリティの高さで、確実に勝てる勝負を仕掛けられます。ビジネスは、買ってもらいやすさ、価格・粗利含め、楽勝に持ち込むことが基本中の基本ですから。

ここまででは「おにぎり」というイメージしやすい物事でなぞらえました。仮に市場価格が不明瞭な商材やサービスの場合、他の市場とくっつけて考えれば、その市場価格を取ることができます。

例えばコンテンツやデザインを売るサービスの場合、単にコンテンツやデザインだけで勝負すると薄利多売になってしまいます。しかしそれらがビジネスに役に立つとわかり切っている場合、ビジネス全体にコンテンツやデザインを組み込んで「カッコいい!」「わかりやすい!」とする見せ方と立て付けをしてしまえば、それはトータルプロデュースとかブランディングのサービスに化けるのです。

アイディアとして、これは逆向きにすることも可能です。1本の単価が高いものの複数人にインパクトや話題や意義を与える商材やサービスの場合、それをある種の記念碑やお祝い事のようにパッケージして「多売化」に転換することも可能です。なぞらえる先を「記念アルバムやお祝いごとのサービス」として据えれば、1人あたりの価格が数千円や数万円であっても、50人や100人いれば、あっさり50万円や100万円に届きます。(少子化はさておき)仮に入学や卒業といった行事の場合だと、もっと人数がいることでしょうし、これはコンスタントに起こります。機能だけでなく情緒でもピン!と来てもらうことができます。

 

現実解。

価格は、単に現状のビジネスモデルだけで決める必要はありません。むしろ現状維持からはみ出し、別な分野に足を踏み入れつつ、無理なく自然に「欲しい!」と言ってもらえるような場をつくることが、すべてに先立つのです。

「払っても良いと思ってもらえる比較軸」に本業を乗せることで、自然と買ってもらうのです。その結果。お客様が喜んで前向きに過ごしてもらえるとしたら、そのビジネスは「売らんかな」という押し売り要素をゼロにできます。

そのぶん「おもしろきこともなき世をおもしろく」とか「世の中を前向きにせんとや生まれけむ」のような言葉が似つかわしくなることでしょう。結果として、二の足を踏む発想も自然消滅するかと思いますが、いかがでしょうか。

boxcox.net、遠藤武。

遠藤武(えんどう・たける)
グロースハッカー。
endoutakeru

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■遠藤武のやっていること■

・経営トップ向けに「仕組み化」のプライベートアドバイザリーを手がけています

・中央経済社『旬刊経理情報』誌にて、仕組み化とデータ分析に関する見開き2ページ連載記事を、2022年7月より月2〜3回ペースで執筆しています
(2024年8月に50回を超え、書籍化企画を進めています)

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