以前「アマゾンやグーグルなどの外資ITベンチャー超大手がリモートワークやテレワークを減らす・無くす」実情について書いた。
今もなおリモートについて「何が正しいか」ばかりが取り沙汰されているため、ちゃんと言い切ってしまおう。
そもそもだが、リモートワークを減らしたり敵視する原因を見てみよう。
外資ITベンチャー:
(1)日本の昭和や平成初期のモーレツ根性主義に近い古臭い体質がある
(2)非IT企業に比べて働き方周りのガバナンスのアップデートが乏しい
→そのためリモートワークを勝ちパターンに持ち込む意思がなく、リモートをみんなそろって敵視する同調圧力がかかっている
まず(1)は「ひたすらモーレツに働け」とか「ITベンチャーが集まるカンファレンスに行って足で売ってこい」という発言がアメリカのITベンチャーに目立つ。
これは日本人からしたら違和感や既視感ばかりだろうと思うが、昭和や平成初期の感覚のままなのである。
ある程度本を読んでいるなら、アメリカ発で日本語に訳された古めのマーケティング本で「DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)」という切り口があるが、その発想はアメリカのITベンチャーにはほとんどない様子である。
また「お客様の成功」を定義したコンセプトで売る手法も、もはや当たり前になりつつあるが、アメリカのITベンチャー企業にも、それを投資で支援するVC(ベンチャーキャピタル)にも、その切り口は全くない。
次に(2)について、外資製薬などの非ITの事業会社との比較で見ると、外資事業会社はリモートワークを含めた働き方の仕組み作りがとても巧い事実が挙げられる。
製薬の場合はヘルスケア領域という業界特性もあるが、それ以外のエネルギーや製造といった非IT業界でも、ポジションに応じて物理的・技術的にリモートワークはいくらでも可能である。
現に複数の業界で、新型コロナ以前からリモートワーク(WFA, Work from Home:在宅勤務)が当たり前に制度として可能であり、私もサラリーマン時代の終盤数年は堂々と活用していた。
これは究極的には、ガバナンスという組織の「守りの仕組み」の話に行き着く。
日本人で多くの人が「すごい!」と憧れる外資企業の強みは、ガバナンスの強みであり、働きやすさがそのままカッコよさと掛け算されているのだ。
このようなリモートワークを含めたガバナンスは、昭和や平成初期の日本に似たモーレツ主義の勝ちパターンが残存するせいか、外資ITにはほとんどない。
このように(1)(2)を見ていけば、原因は「同調圧力でしかない」と言わざるを得ないのが実情である。
現に日本の場合「転勤やモーレツな働き方はやめよう」という前提が多くの認めるところである。
NTTや富士通が「出社を出張扱いにした」というのは記憶に新しいところであり、YahooやPayPayはフルリモートワークを終わりなく続ける姿勢である。
これが日本の通信最大手やテック企業の現時点での事実であり「外資IT大手だから出来ない」という理由には一切ならない。
というように、ガバナンスを機能させればリモートワークは可能な事例はいくらでもあるため、「やらない!」と言い切っているのは、単にやる気がないだけの話なのだ。
もちろんだが、外資ITの事業構造に見合わないなら、組織の本音に即して議論し、身の丈に合った形でリモートワークを行えばいいだけである。これはガバナンスに必要な対話であり、人材獲得という面でも有利になる。
にも関わらず、頑なにリモートを「やらない!拒否!」の一点張りで理由なく終わらせているのは、単に昭和や平成初期のモーレツと何も変わらない頑固モノというだけだ。人材獲得の観点で、この点をつついていけば勝ちやすいのにそれをしない…というのは、他に理由が見つからない。
外資企業は「クール!」「働きやすい!」といった印象を日本人の就職・転職市場に与えている。
その中で外資IT超大手が「リモート拒否!」であり、一方では日本のIT大手がリモート歓迎なのは、流れが変わってきてチャンス!と捉えればよい。
現実解。
事実をありのまま受け入れると、外資IT超大手の「リモート拒否!」は、昭和や平成初期の古臭さと全く同じ。
リモートワークの生産性について、調査や研究やオピニオンというロジックがこれからもたくさん出てくるだろう。
ロジックはいくらでも後付け可能だが、本当の意味での働きやすさは本音の要素が強い。
「嫌なことから脱したい」という本音は誤魔化しがきかないことが、厳然たる事実だ。
ボックスコックスネット、遠藤武。