「年収3000万円レベル超え」と書いたが、
これは実質は「サラリーマンとして年収1000〜3000万円レベルの帯域の上位に達すること」と「この帯域の突破」の両方があると読みとってもらいたい。
というのも、サラリーマンでのこの帯域は、どうしてもレアすぎたり、あるいは手数が多くなりがちなためだ。
以下ではその背景を見ていこう。
実のところ、サラリーマンである以上、
晴れて年収1000万円レベルに到達しても、昇進の壁や給与テーブルの壁や業界の壁があり、
おおよそ年収1500〜2000万円くらいで壁が見え始める。
否、年収1500万円を超えずに1000〜1400万円水準で天井を迎えてしまうこともあるのだが。
金融とコンサルを除く、外資企業(製造業やサービス業などの事業会社)の場合、
権限が強いファイナンス部門に所属したり、あるいはマネージャーと呼ばれる部下を持つ立場になると、
年収1000万円を超えるが、1500万円や2000万円となると途端に数が極めて限られる。
日本の大手企業の場合、昇進していけば年収1000万円を超えて1500万円に到達するが、
到達するには新卒入社後20年はかかってしまい、能力のある人からすればノロノロである。
また、今では役職定年という制度もあり、年収の天井は回避できない。
少数派の中の少数派の話をすると、
MBB(マッキンゼー、ボストン、ベイン)やATカーニー、ローランドベルガーのような戦略コンサルティングファームに属し続けたり、
ゴールドマンサックスのような外資金融機関のIBD(投資銀行部門)に属し続けたとすると、
おのずと昇進で賞与込み年収3000万円〜1億円くらいの水準に達することは知られている通りだが、
ポジションの数が限られる上に、そもそもup or out(昇進するか辞めるか)の激務なので、続けること自体が厳しい。
更にコンサルティング会社の話をすると、
アクセンチュア、big4監査法人系(デロイト, PwC, EY, KPMG)といた外資の総合コンサルティングファームが挙げられるが、
これらは外資事業会社と同じくらいか少し上の年収であることが多い。
金融機関など大手企業系列の日系大手コンサルティングファームもおおよそこの水準に準じている。
いっぽうで日系コンサル会社では、中小企業向けコンサルがメイン事業という場合、
実態は営業会社であり、自分で受注しないとそもそも待遇が上がらないビジネスモデルである点に注意が必要だ。
同じ「コンサル」を名乗っていても、大企業を顧客にする外資ファームや日系大手ファームは、
職位の高い人(パートナー、ディレクター、マネージャー)が営業を行う点を覚えておこう。
また資格職の話をすると、
病院に勤務する医師の平均年収は平均して1200〜1400万円であり、
独立して開業医になると平均してその倍の2400万円くらいと言われている。
あくまで医師免許保有者にだけ許された診療報酬によるものであり、
勤務医の場合が当直と呼ばれる夜間帯の勤務を伴ったり、
開業医の場合は集患(=一般企業でいうところの集客)を行って人を捌いていく必要があるため、
どうしても限界が生じてしまう。
これら以外となると、
グレードは最下層まで下がってしまうが、
フルコミッション(完全成果報酬)の営業マンのようなものしかなく、
先に挙げた中小企業向けコンサルと同じで、
サラリーマンなのかフリーランサーなのかもはやわからないことになる。
前置きが長くなったが、こうやって背景を読みとって行くと、
おおよそ年収1000〜3000万円に壁が残ることになる。
とすれば、このレンジで確実に上位を狙いつつ、
極限までシンプルかつ手数の少ない仕組みに移り変わるしかないのだ。
独立するにしても、サラリーマンと似たことをやっていてはどうしようもない。
私は年収について相談されるとき、
「年収1000万円のラインからは、自分に有利な形で独立の道筋を作らないと、高確率で年収に壁が残り続ける。ということは独立を模索しないと成長が止まる」
「外資コンサルや外資事業会社など、転職組が当たり前のように年収1000万円を得られる分野では、このラインを年収600万円程度に前倒しして差し支えない」
と答えている。
サラリーマンの給与テーブル相場や、人材市場を鑑みると、
どれほどとびきり優秀でも年収1000万円から3000万円のレンジで給与テーブルが限界を迎え、
その限界を確実かつスピード感を持って超える分野は、サラリーマンである限り皆無であるためだ。
ということは、
フルタイムという働き方から抜け出せないまま「人材市場の常識」「専門職の常識」を押し付けられる側に留まるのである。
難易度が高い割に、労力や投資対効果に見合わない仕組みを強いられてしまうと言っていい。
向上心を持って頑張る人は多いが、市場の常識を押し付けられたままでは、いくら頑張ろうとも成果に繋がらない。
となれば、
・年収1000万円が当たり前の分野という、武器や地の利を活かす
・自分が横綱相撲を取り易い形態で、人のお悩みを解決する動線を作り、重宝される
という仕組みで、淡々と動いてしまうほうが早いのである。
「自分は営業経験も新規事業立ち上げ経験もない。。」
と尻込みするかもしれない。
もちろん、一旦サラリーマン時代から年収が下がるかもしれない。
ただし、心配ばかりしていても意味はない。
少なくとも年収1000万円に達する上での専門性や、転職経験のいずれかがあれば、
「目の前にいる人の問いに答える」ことが可能だ。
年収1000万円以上に達した人は上位5%側と言われている。
その地の利と経験という一次情報を掴んでいるだけで有利な側であり、
伴ってクライアントや患者やお客様の問題解決という専門性があり、
パフォーマンスを高めるための工夫や失敗談もあるため、純粋に有利な側なのだ。
ただし、年収1000万円到達が常識的なゴールとして機能しているところがあるゆえに、
自分の強みが見えなくなるのがこのレンジの怖さでもある。
そのままズルズルと過ごしてしまうのは、ちょっともったいない。
どのみち普通にしていたら、年収1000〜3000万円のレンジには壁があり、
それを超えられないまま年老いて終わってしまう人が大多数だ。
多数派から抜けないことには何も変わらない。
一桁少ない年収300万円は大多数側であるが、
学びながらも思い切ってスットボケる側に回らないことには、
いくら年収が高まっても大多数側という、元の木阿弥になってしまうのである。
一時期栄華を極めた人が、いつのまにか落ちぶれてしまうのは、
途中で大多数側落ちしたか、学ぶことや行動をやめてしまうのが原因だ。
これと真逆で、毎日書き続けたり、毎日掘り下げ続けたり、
毎日愚直に商品やサービスの質を上げることに余念がない人や、
「これってそもそも『欲しい!』と言ってもらいやすいよね」
という物事について、自分の武器の開発として情熱を注ぎ込める人は、
学ぶこともボケ役もできており、
淡々と継続して、成長が止まらないのである。
現実解。
淡々と質を上げるということは、
今いる立場や今いる常識にとどまらないということだ。
これは給与テーブルや報酬水準という常識を押し付けられる側には、
決して理解できない「お金以上に超えられない壁」があると知っておこう。
自分の作った常識を用いて、世の中の常識を上書きすることが、この壁を越える道筋なのだから。
追記。
この場合、移籍というよりは本当の意味で独立することになる。
もちろん、その影響でいったん年収がサラリーマン時代より下がることも多々ある。
水準を超えるということは、いったん常識を捨てることであり、
「にもかかわらず」やるということなのだ。
独りで立つということは、
「にもかかわらず」他者から支持を得ることに他ならず、
結果として自分のカンバンを掲げることが鍵なのである。
追記の追記。
このレンジの場合、学歴の意味はなくなる。
もっとも「やった!学ばなくてもいい!」ということではない。
学歴を超えて圧倒的に学び続けるという意味のため、
試験対策や既存の科目や、ペーパーとしての学歴など、眼中になくなるということだ。
昭和に中卒や小卒から大企業を作った人は、社会制度が整備されていない中、そうやって学んでいったのである。
boxcox.net、遠藤武。