「部下は何が何でも守る」こと。
それを淡々と言行一致すること。
上司の仕事とはそれだけである。
現実解。
この事実を、勤め人になる前の大学生時代に教えてくれたメンターがいた。
研究職に就こうとしていたけれど、それも退屈そうに思っていた矢先、
たまたまウェブ上で知り合った、大学の先輩だった。
メールをやり取りして聞いてみると、国立の研究機関を経て、
リサーチアナリストとしてとある最大手外資企業に勤めているとのことだった。
話を聞くにつれ、研究職にそっくりでありながら、
外資コンサルタントや外資金融を凌駕して遥かにレアである、
外資企業のリサーチアナリストという立場に思いっきり惚れてしまった。
全く損得勘定抜きの憧憬に気づかれたのか、
その方はなんと自分に、アシスタントとして仕事を振ってくれた。
基本的な業界の仕組みから、仕事のやり方まで、
同じ大学でのハードワークを軸にするという視点から、
自然な流れで学び尽くすことができた、最高の経験だった。
これは文字通り、当時ちらほら出てきていた「インターン」である。
後でさらに驚いたのだが、この最大手外資企業の日本法人には、
当時も今もインターンシップの制度は用意されていない。
その先輩、当時は自分で「ひよっこ」と言っていたが、
今は主席アナリストに昇進し、立派な地位を築いている。
正直に言ってしまおう。
「ひよっこ」を自称した方の、当時の独特な意思決定がなかったら、
ひよっこどころか黄色いクチバシに卵のカラがくっついた程度の自分は、
その後まともにビジネスになど関われていなかったと断言していい。
頑固者だった思考の軸を、ゆったりほぐして、
ビジネスと学問の両方を確実にカバーし、
柔軟に行き来できる視点を持てたのは、この方のおかげだ。
単にこれだけで、自分で自分を嫉妬してしまうほどだが、
件の最大手企業が関わる業界に後々に関わって、
「実はあの企業で私的にインターンをしてもらってました」
と業界の人に告げると、100%驚かれるというおまけ付きだ。
これだけなら、単なる昔話や他愛のない自慢話でしかないが、
今もなお世界で進化しつづける分野を扱う最大手企業の分析手法や背景を、
自分の頭に徹底して落とし込むようになれたことは、何よりも尊い。
また、この最大手企業が扱う分野を見ていれば、
基本的に世界レベルで新しい物事に困ることがないという、
どうみてもメインディッシュとしか言えない規模のおまけまで付いてきた。
自分の背景を特定の業界だけに狭めて人に話さないようにしているが、
ピンと来た該当業界に関わる人に、ここまで話してしまうと、
今や、確実に顔が引きつるくらいのインパクトがある。
「今や」とつけたのは、
「インターンシップ?なにそれ美味しいの?」
という時代が、7〜8年くらい前にあり、
この経験は、当時はまるっきり理解されなかったためだ。
今となっては、それは完全に笑い話である。
そんな笑い話や、人の顔をひきつらせる話よりも、
「きっとあの先輩とその周辺の環境なら、こう考えるだろう」
というように推定できる一次情報を得られたことが、
最強の経験だったと確信し、味わい深く反芻している。
自分が人生で一番最初に部下として動いた経験だったけれど、
得た一次情報は、自分にとっては守り神のような存在と即答できる。
自分にどんなに嫌なことがあっても、
一切腐らずに動き続けてきているのは、
そうやって間接的にも直接的にも守られているからであり、
ふと思い出し、ただただ感謝して喜ばずにはいられないのが事実だ。
ここで大事なことは、
「仕事なのか本気でやる遊びなのか、ごっちゃにしてしまう」
という視点である。
「仕事を戯れ化せよ」と言ったのは、安藤百福である。
これは仕事から喜びを得る上で、一番重要な視点である。
私はこれを常に一番大事にして来ているし、
お客様にもそれを分かるまで繰り返し述べ続けている。
論拠には、この経験が根っこにある。
全てを戯れと化して、自分も周囲も、
シンプルに守ってやればいい。
身の守りを自前で出来る方法を伝えればいい。
上司が目指すは、究極のcare giverだ。
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遠藤武