シンプルとは、深さである。
浅さとは、掛け算がない状態である。
この2つには、大きな隔たりがある。
現実解。
シンプルに言い表せる物事とは、
徹底して情報を集め、
徹底して理詰めにし、
徹底して行動して、
徹底して思いを馳せて、
結果的に残った物事を掛け算したものである。
シンプルに見せかけて、
実態がまったく浅い物事は、
単に何となく試してみただけで、
そこに独自性や一次情報がないし、
単なる断片でしかなく、思いがまったくない。
情報とは、情に報いると書くが、
情もないし報いてもいない物事は、
とても退屈なのである。
例えば、論文を引用してつぎはぎにするだけなら、
大学に入学して少し学んだだけで、
何となくできることであって、
その背景や文脈に即した新たな知見が見えることはない。
何となくウェブ検索したら、
まとめサイトやまとめ動画だらけだが、
それが飽きられてきているのも、
ツギハギだけで掛け算がないからだ。
この真逆。
市場動向の洞察を出すアナリスト時代にやっていたことだが、
顧客が「ほしかった!助かる!」と評価する洞察は何か、
顧客が市場で言語化しきれていなかった思いは何か、
そのためにどのようなデータが必要か、
そのためにどのようなロジックが必要か、
次とりうる行動は何か、
常に見定めてヒアリングを行いながら、
統計予測を行っていた。
顧客は百戦錬磨の40〜50代であり、
20代かそこらの若手だった額面通りの自分では、
太刀打ち出来ないことは明白だったが、
幸いにして顧客から好評を頂き続けたのは、
データからロジックを導き、
何となく思っていた物事や、
思いもよらなかったが事実は事実として認めるべき物事を、
確実に網羅して統計予測での評価軸を作っていったからに他ならない。
アナリストというと、データやロジックの鬼と思われがちだが、
単なるデータやロジックの積み重ねからは、
本質的な思いは浮かび上がらない。
市場の動向にダミー変数を置いて、
トレンドを測ると統計モデルが思いもよらずハマったりと、
データ分析には思いを的確に載せる必要がある。
何がいいたいのかというと、
浅い場合は、単にデータだけだったり、
ロジックだけだったり、行動ばっかりだったり、
思いを馳せるばかりだったりして、
掛け算がないことを疑ってみよう。
面積を求めるには、タテとヨコを掛け算する必要がある。
体積を求めるには、タテとヨコと、高さを掛け算する必要がある。
深さとは、文字通り体積を求めてわかることであって、
何となくツギハギにしただけでは絶対に出てこない。
ありがちなヤラカシとして、
言葉がただ複雑なだけの場合は、
浅さをごまかしているだけだと思っておくと、
わかりやすいだろう。
統計データでも会計データでもマーケティングでもいいが、
データやロジックの裏側には、
少なくとも何らかの人間の思いが存在している。
必ずと言っていいほど、そこに掛け算がある。
言葉をシンプルにしても一瞬で伝わるのは、
思いとロジックとデータが、
渾然一体と存在しているからなんだよね。
boxcox.net、遠藤武。