財務データの分析について、
・財務モデリング(PL,BS,CFの3表による事業計画と価値評価)
・FP&A(財務企画・管理会計。いわゆる経営戦略。マーケティングやSCMやデジタルや投資価値評価も含むケースあり)
の二者がある。
どちらも経営を考える上で重要な概念だが、
財務モデリングとFP&Aを行き来する例は、あまり多くないのが実情だ。
投資銀行から事業会社の経営企画に行くケースは限定的であり、
またその逆は更に数がかぎられる・ほとんどないため、
実情として、双方を根本から理解して使いこなすスタンスの人材や経験者は少ない。
あるいは、双方を経験していても、
ハードワークで個別論点にまみれてしまい、
シンプルな本質を出す人が皆無というのが現状だ
ここに一石を投じたい。
「本質的な違いはモデルの解像度だけで、原理原則は共通している」
というのが、両方を経験した私の主張である。
例えば財務モデリングでは、
解像度を下げることで、
売上予測がしやすい形に変形し、
「標準単価×販売数」のように要約することが多々ある。
一方でFP&Aでは、
解像度を高めたまま維持し、
販売する商品が多くてプロダクトミックスが生じる場合だとしても、
実情に即した形でその算定を各拠点のCFO組織(コントローラーやファイナンシャルアナリスト)が行う。
これはどちらが良い悪いというものではなく、
財務モデリングは時間制約がある数ヶ月のプロジェクト向けの技法であり、
FP&Aは月次・年次サイクルで恒常的に行うオペレーション向けの技法であるからだ。
とはいえ複式簿記の原則から言うと、
「財務モデリングとFP&Aの本質的な違いは解像度だけで、原理原則は共通している」
のが実情である。
このような素直な見解が極めて持ちづらいのは、
財務モデリングは投資銀行やM&Aアドバイザリー等が用い、
FP&Aは一般的な会社組織(事業会社)のファイナンス部門が担うため、
「キャリアで行き来がほとんどない」「ハードワークで疲弊して技法を残せない」
「技法が先行するのではなく、キャリア依存や人依存が先行している」
という状態ゆえに、断絶が生じているためと考える。
この断絶を放置するのは、そもそも乱雑でお粗末だ。
テクノロジーを軸に、時に行動科学や心理学まで含むオペレーションズリサーチという横串の学問が、
ここに存在していないということになってしまう。
とすれば、まずは、
複式簿記の原理原則によって立ち、
PL/BS/CFに横串を通し、
素直に原点回帰をしてはどうだろうか。
(ここにデータ分析分野のテクノロジーを加えたいところだが、それは一旦棚上げにしておこう)
徹底的に無駄を削ぎ落とすと、
「売上、経費(減価償却費を除き、税金を含む)、現金預金の動き」
の3項目があれば、
財務モデリングもFP&Aも、
連続性のある理解が可能だと断言できる。
企業が行う定量分析と定性分析は、
綺麗事を抜きにすると、
全てキャッシュフローを残すために行う。
この本質はデータベースとしての複式簿記を理解していればあっさり理解できるし、
少なくとも経営者であるならまずは本質だけを把握していればいい。
モデリングやFP&Aそのものが難しいのではなく、
キャリア依存と人依存、
ひいてはハードワークによる断絶が、
誤解をもたらしているのである。
現実解。
仮にモデリングやFP&Aがつまらないとしたら、
組織や権限がつまらないことを疑おう。
追記(2022年7月18日)。
中央経済社さんの『旬刊経理情報』と、
同社が運営するnoteの二本立てで、
『データ分析の森』を連載しています。
モデリングとFP&Aと統計学・アナリティクスに関わってきて、
それらを下地に仕組み化を手がけている立場から、
実は勝ち筋が無数にあると断言していい。
シンプルに、動いた人にリターンがあるんだよね。
目の前の物事が凝り固まっているなら、
その逆を取ればほとんどは勝てます。
更に追記(2023年7月26日)。
連載1周年を超え、
財務3表のモデリングを徹底解剖しています。
シナリオづくりから、貸借バランスについて、
既存の方法を、FP&Aや経理に寄せる形で、
アップデートしています。
どこかでモデリング自体を公表するかもしれません。
更に追記(2024年7月25日)。
連載は2周年を超え、本誌執筆回数は50回に達しました。
boxcox.net、遠藤武。