「AI化で、公認会計士や税理士の仕事が減ると言われて久しいです。AI搭載のクラウド会計が流行ってきている今、これは本当に進行しているのでしょうか?」
システムのせいにしても意味がない、というのが第一です。事実はその真逆であり、1つずつ見ていきましょう。
ソロバンや電卓が使われても、仕事は減っていません。むしろスキルが求められます。
パソコンやExcelやパワポが使われても、仕事は減っていません。むしろスキルが求められます。
スマホやタブレット端末やクラウドが使われても、仕事は減っていません。むしろスキルが求められます。
AIも、これと同じです。
AIは判断を伴う仕事には向かないのです。
現時点のAIは、単純作業をなくすことはできても、公認会計士の監査や、税理士の税務調査対応をなくすことまではできません。そこに必ず人間の判断が介在するからです。
「会計士」という言葉の一人歩きについても、事実を見ていきます。
原著論文を見ると、以下の事務職がコンピュータに置き換えられる可能性が高いと書かれているのみです。「(公認)会計士」としてしまうのは、もはや誤訳と言わざるを得ません
・Tax Preparers(税務申告の事務職)
・Bookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks(簿記・会計・監査の事務職)
・Accountants and Auditors(経理担当者及び監査担当者)
ここには、公認会計士を意味するCPA(Certified Public Accountant)や、Chartered Accountant(英国勅許会計士)といった専門職の言及は、ありません(税理士は日本ローカルの資格のため、そもそも存在すらしません)。
公認会計士は会計監査人としての役割を担いますが、上記のAuditor表記をもって強い立場を有している会計監査人だと言うには、監査を少しでも知っていれば、かなり厳しいとわかるでしょう。AIを活用することで会計監査人の仕事が効率化されることは十二分に考えられますが。また、そもそも大手4大監査法人は、系列のコンサルティングファームでAIの活用を含むデジタル領域を手がけています。
現実解。
これらの事実を勘案して、インフレ的に期待されたAIの動向について、少し冷静になってみるくらいでよいのではないでしょうか。
AIを使う側として活用し、人間にできることだけに特化するほうが、自分の得意分野で過ごすことができて幸せなはずです。
boxcox.net、遠藤武。