将来や未来の価値を作る上で最も重要なのは、口約束だ。
特に経営者どうしの敬意は、すべて口約束に行き着く。
ありのままを言うと、契約書は重要ではあるが、単なる最終確認の事務手続きに過ぎない。
詐欺師は、平気で契約書を無視して消えていくし、口約束も当然のように破る。
契約や口約束を破ることが、詐欺師のビジネスモデルであるためだ。
ここで言う口約束破りは、3つある。
(1)逮捕されるレベルの純度100%詐欺師のケース
(2)真面目にやっていたのに契約がチグハグになって結果的に嘘つきになってしまうケース
(3)そもそも口約束を守れないヘナチョコの安請け合いのケース
この中で一番悪質なのは、(1)の逮捕されるレベルの詐欺師ではない。
(2)の真面目な場合や、(3)のヘナチョコの場合である。
詐欺師は一瞥すれば判断がつくため、回避などいくらでもできるし、何なら詐欺師に嫌われる属性を持っておけばいい。
(こちらの個人情報を一切出さず、相手の必要なことは喋らず、詐欺師にだけエネルギーを使わせておけば、詐欺師は消える。)
真面目な場合や、ヘナチョコの場合は、ちゃんと「本当に口約束を(フォローアップを含め)守る動きをしているか」を常に見ていく必要がある。
未来作りは、不確実性がつきものだ。
ふとしたはずみに、なんらかの不義理を働かれることもあるだろう。
私としても、義理人情を通したい人に、口約束を徹底して守るようにしている。
わざわざ「している」と添えたのは、物事には不確実性があるからこそ、
何らかのフォローアップが必要であり、それが口約束のアップデートとして機能するためだ。
例えば、待ち合わせで到着が遅れることが確定した場合、前倒しで即メッセージを入れるようにフォローアップする…といったことだ。
時間厳守が基本であるし、私は徹底して常にそうしているが、止むに止まれぬという場合のアップデートは、必修科目なのだ。
これは義理人情の通し方でもあり、上司と部下が報告・連絡・相談するように、「便り」でアップデートしていく意味だ。
(抽象度が極めて上がるが、「便りがないのは良い知らせ」というのは良い関係だ)
要は、口約束を守るとは、筋の通し方なのである。
ちゃんとこちらが義理人情を通した上で、仮に矛盾していても、最終的に辻褄が義理とマッチすれば事足りる。
不義理を食らったら、仮に矛盾していなくても、完全に放置プレイしていい。
自分に被害が及ばないように先手を打っておけば、何も問題ない。
その上で復讐したければ復讐してもいいが、
口約束を破った相手に対して経営者同士はとても厳しいから、
相手のことなど忘れて、ナルシストに自分のなすべきことをなせばいい。
そもそもだが、口約束を破った人や組織は、100%例外なく重いツケが回ってくるか、実力不足でずっと低空飛行を続ける。
私の知る一番ひどいケースを言おう。
経歴の毛並みがとても良く、ブティックファームのトップを務めたあとテックスタートアップの経営陣に就任した人がいるが、
法規制と技術的制約で伸び悩み、経営陣どうしのガバナンスの不意を突かれて吹っ飛んだと報じられた。
実のところ、その人がトップを務めていたブティックファームが無理をしていたのか、契約を取るために関係者にウソをついていた事実が発覚し、答え合わせができてしまった。
別な空間と時間の軸で「ああ、やっぱりな…そう繋がるのか」と実感したのは、言うまでもない。
契約を守れないのはコンプライアンス違反であり論外だが、
契約の如何を問わず、口約束破りが前提になるというのは、甘っちょろい半人前だと相場が決まっている。
否、甘っちょろいだけでは言葉が足りないから「口約束破りは詐欺師を超えた詐欺師である」のだ。
現実解。
口約束は絶対に死守すべきであり、死守できないなら口約束などする必要はない。
やさしい追記。
口約束するのが難しい内容の場合、わかったような口約束に逃げず、まずはファイティングポーズを取って応援すればいいだけなんだよね。
見栄や誇大広告をやめればいいんだから。
ストレートな追記。
自分から口約束を守らない(=フォローやアップデートがない)なら、その人は絶対にどこかで別な誰かに恨みを買っています。
また、実績や人望のない人の場合や、組織人丸出しの召使いの場合や、生殺与奪を他人に握られた三流四流の場合は、そもそも実力不足なので口約束は絶対に守れません。
だから、いちいち表立って復讐する必要などありません。
もちろん、誰かと別れるために口約束を破って完全犯罪のように向こうから離れていってもらうという、自分で自分を追放する高等テクニックもありますが、これは超少数派のあり方です。
もひとつ追記。
特に連載執筆していると「原稿を締切通りに出す」という口約束が、何にもまして大事だと気付かされます。
boxcox.net、遠藤武。