財務モデリングとFP&Aの違いは、現場感覚にある。
財務モデリング:解像度が低い。投資家目線でとてもシンプルなKPIを定めてトラッキングする。企業・事業を筋肉質に成長させる現場の行動にフィットするとは限らないが、上場や事業売却のための行動にはフィットする。
FP&A:解像度を上げ下げする。組織の行動を作って成長を推進する分析がメインであり、市場と企業・事業のあらゆる要素をみていく。特定のKPIのトラッキングだけでなく、現場を筋肉質にする抜本的な切り口も重視する。
これは「抜本的な現場感覚」という立場の差に行き着く。
財務モデリングについて「KPIをしっかり作ってトラッキングしているじゃないか!これは現場感覚ではないのか!」のように即答されそうだが、
これはFP&A目線で言えば「NO!そうとは限りません」であり、「現場主義でみればKPIを素直にわかりやすくカバーすれば終わりではありません。それはあくまでバリューを作れない投資家都合です」と言うしかない。
そもそもFP&Aは、規模が大きすぎて無邪気にKPIに分解できないケースへの対応もあり、かつKPIが前提から変わってしまう組織や座組みを根本的な変化のケースも含み、営業品目も商流も多岐にわたる。
もちろん小規模な場合にも、KPIだけでは動かないが、FP&Aの抜本的な現場感覚が有効というケースも多々ある。
これをそのままKPIとして当てこむと、理路整然と間違えてしまったり、現場が動くのが嫌になるマイクロマネジメントに陥りかねない。
だからこそ事業責任者や、現場に聞き取りを行い、データだけではわからない実際の動きを見定めるのである。
ベンチャーのCFO経験者の場合、投資家都合でPMF(プロダクトマーケットフィット)が済んでいる場面しか扱わないため、
FP&Aのようなカオスっぷりに関わることがなく、なんでもKPIで見るという発想で止まってしまうのが実情だ。
実のところは、ありものから入り、粗々の分析を重ね、わかりやすくToDoを作るというFP&Aのほうが、成果が出やすいのだが。
現実解。
現場のカオスとありのまま戯れるケースのほうが、KPIが素直に回ってくれるケースより、圧倒的に多いと覚えておこう。
ボックスコックスネット、遠藤武。