思考力を「スキル」として鍛えるコンテンツが数多く増えている。
これはこれで良いことなのだが、
思考力は、基礎知識の質と量が確保されていて、
初めて機能するという事実を知っておく必要がある。
特にデータ分析が広がりを見せている今となっては、
「スキル依存」や「職歴依存」で止まってしまう物事は、
単なるコモディティ止まりになりかねない。
というのも、データ分析はアカデミックな積み重ねがあるためだ。
アカデミックな積み重ねとは、
「文献の引用」による組み合わせや、
「既存の先行研究にない仮説や切り口」のことだ。
それは基礎知識あってのことである。
義務教育レベルの知識がない状態では、
いくらビジネススキルを蓄えても、思考力にはいたらない。
逆に言えば、義務教育レベルの知識があれば、
「比例の式(小学校の算数)」
→「一次関数(中学校の数学)」
→「散布図と相関(高校の数学)」
→「回帰分析(高校の復習・大学の数学、大学以降の数学)」
と繋げていくことができる。
もし少しハードルが高く思えても、
基礎知識をベースに動画や検索で調べ込むとか、
良い本を参照することで、基礎を得ていけばいい。
本来の思考力とは、基礎知識がつながり、
柔軟性と想像力が広まっていくということだ。
知識の構造を用い、思考をどう広げるかがポイントであり、
アカデミックスキルと実は変わりない。
これを「思考力=スキル=職歴依存」という曖昧な捉え方で終えてしまうと、
思考力そのものが単独で存在するかのように、
すべてを終えてしまいかねない。
名だたる企業を経験し、
ある程度頭を使えるにも関わらず、
思考力が単なるスキル止まりという、
「ビジネス屋さん止まり」の残念なケースを多々見かける。
これは「スキルのためにスキルを売る」という、
とてもニッチなタコツボで自己完結しているだけである。
さすがにちょっともったいない。
本当に思考力があるなら、
外資企業だろうとそうでなかろうと、
各分野の基礎知識を吸い上げて、
自分の進みたい分野の研究にさえ応用できる。
実のところ、1つの知識は他の知識を参照しており、
他の分野に連なっているのである。
私が手がけてきているデータ分析についても、
統計学から土木計画論からバリュエーション(投資価値評価)まで連なっており、
そこにはFP&Aやマーケティングやデータベース論から、
プロジェクトマネジメントや行動分析学の素養まで、
複数の分野を横断しているのが実情である。
これらは私が関わったごくごく一部の個別分野に過ぎないが、
基礎知識があればだいたいのことができてしまうのだ。
現実解。
逆から捉えよう。
個別の基礎知識をあまり問題にせず、
「思考力=スキル」としてグレーゾーンに放り込む物事は、
実は基礎知識で上位互換させることができてしまう。
これは実力をつけることで解決できるチャンスが、
世の中のあちこちに眠っているということだ。
そうやってワクワクしていくことも、
理屈を超えた思考力の本質のうちである。
boxcox.net、遠藤武。