インサイトとは、論理を重ねて推定し、その精度を高めていくことに価値がある。
目で見える程度の物事や、自分の経験した程度の物事で判断しているうちは、
ファクトもデータも足りず「インサイトを出した」などとはクチが裂けても言えない。
データドリブンが各所で連呼されて久しい。
実のところ、企業にとって最古のデータドリブンの道具は複式簿記である。
これは現代では、P/LやB/SやC/Fの計数管理とモニタリングとモデリングを軸にしたファイナンスだ。
(特に外資の)企業組織のヒエラルキーは、経営陣を除けばファイナンスが最上位であり、
ファイナンスが軸となって意思決定プロセスを踏むのである。
「インサイトを出す」と言うと、統計学や機械学習のイメージが先行しがちだが、
これらは専らマーケティング施策だとか広告の扱いだとかに特化している。
企業全体の動向を左右するファイナンスの面とリンクせず、
企業政治に悩まされて嫌な思いをするという「データ分析者」が多いのは、
組織としての意思決定については蚊帳の外どころか、全くの素人だからである。
「広告屋さんの雇われ技術屋さんだからでしょ?」と言い切ってしまっても良いだろう。
あくまで技術屋さんであり、局所最適化の機会しか与えられていないということだ。
本来であれば、オペレーションズ・リサーチの如く、
技術者をファイナンス機能に組み入れてヒエラルキーを引き上げるのも手だろう。
しかし現段階ではそのようになっておらず、そのせいで意気消沈し、
インサイトを出す役割を死蔵させてしまう人が後を絶たないのである。
ウィトゲンシュタインが言ったように「自分の言語の限界は、自分の世界の限界」という視点もまた、自分自身をえぐり出すインサイトだ。
新たなファクトとデータが出てくるまでは、これくらいで筆を置いておこう。