独立した知的生産を志向しているのに、
ヒエラルキーや常識が優先される組織や場で働いても、
正直なところ全く意味がない。
この場合、直ちに知識を付けて、大急ぎでそんな環境を脱するべきだ。
(なぜ脱出するのか?)
脱出する理由は、「経済活動の舵取りを担う自由」を確保することにある。
要は、組織の都合で動かされて賃金をもらうのではなく、
知的生産ありきで主体的に動いて報酬を出させるという発想だ。
メガベンチャーやスタートアップのように権限委譲や自由があれば、
経営に関わる知的生産にアクセスできる。
自分から仕組みを作って経済活動にコミットできるのである。
いっぽう、一般的な企業や組織の視点から見ると、
経営判断が下せる側に回れなければ、実際は知的生産など不要だ。
このとい、あなたの動作はすべて「おつかい」でしかない。
仕組みを作る知的生産などどこにもない。
あるのは組織の都合というおまじないだけでしかない。
そんな環境とは、トップダウンで不合理に物事を決めるだけであり、
『チャップリンのモダンタイムス』のように、
ただ尊厳のない状況に追い込まれるだけである。
チャップリンの時代はさておき、現代でそのような状況がまかり通るのはなぜか?
それは、企業の経営者の大多数が、知的生産もできず、
知的生産もできず経営能力のないヘナチョコで、
面白い決断を実行する勇気も知恵もなく、
組織の不合理を放置しているというためである。
サラリーマン気質の組織に毒されてしまえば、それが冴えない企業だろうと、
ブランド企業だろうと、優秀な専門職の一団だろうと、行き着く先は等しく、
「経営能力のないヘナチョコ」である。
知的生産が得意な、しかしある意味極めて従順な人は、
このギャップで精神を害してしまいかねない。
そうなっては時間のムダだ。
経済活動の舵取りを担うのか、「おつかい」にかまけるのか。
この視点の違いこそが決定的な問題となる。
まず知的生産を行いたいなら、前者を取ることをはっきりと認識しよう。
(必要な知識は?)
知的生産を経済活動に活用するため、直ちに網羅すべき知識は、
最低でも以下の「4点セット」である。
カッコ書きで、詳細のほか、持っていたら更に有利になる分野を記した。
・プログラミング(必須ではないが、分野によっては数学や統計学も含む)
・英語(文書が読める、契約書が編集できる、ディスカッションやプレゼンが出来るetc)
・ファイナンス(会計や複式簿記に限らず、ITシステムや監査や内部統制や財務モデリングも含む)
・法律(民法、商法、会社法…)
(加えて「独自の専門知識やライセンス」や「スタートアップの作り方」や「そのほかの外国語」を含めてもいいかもしれない。)
この「4点セット」に応じて、3つのケースを以下に仮定した。
(ケース1)「知識が1つだけ」だと、テンプレートを売ることしか出来ない。
おそらく99%の人は「薄いテンプレートが1つだけしかない状況」だろう。
まず、この薄い状況という窮乏から脱することが第一だ。
「いや、自分には無理だ」と、やらない理由付けをしたくなるなら、
脱することを諦めて嫌なことを嫌々やる以外にない。
それも人生の選択の一つだ。
もし、嫌なことを嫌々やりたくないというなら、
何が何でも「知識が1つだけ」から脱出しよう。
自分の今までをすべて捻じ曲げてでも、
そこに注力する意義と時間対効果は非常に大きい。
現在の組織が学ぶことを味方してくれるなら、それを活用してさっさと脱出しよう。
学ぶことを味方してくれないなら、ウェブで誰かを見つけてその人を真似したり教えを請おう。
また、関連する学問分野を学んでいるなら大チャンスだ。
数学が関わってくる分野を知っていれば、どうとでもなる。
社会学・心理学・経済学・政策科学・数学・自然科学全般…を学んでいるなら、
それらに付帯する統計学からプログラミングに入ればいい。
繰り返すが、この状況自体が危機的であり、とにかく脱することが第一だ。
それ以外は何も考える必要はないと断言しておく。
(ケース2)「4点セット」が2つ以上あると、転職・移籍市場で一気に有利になる。
比較的若い人が狙うべきはここだ。
・プログラミング+英語
・ファイナンス+英語
あたりが狙いどころだろう。
ここに数学を混ぜ込んでおくと、市場価値が一気に上がる。
これで99%の状況は脱することができる。
なお、「4点セット」でプログラミングを一番最初に提示しているのは、
新規参入と持ち運びが一番簡単で、組織に依存する必要がないためである。
英語を二番目に提示しているのは、プログラミングを好む人の一番の弱点だからである。
これが出来ないばっかりに、損している人があまりにも多い。
ファイナンスを三番目に提示しているのは、
組織にぶら下がりつつ有利な移動がしやすいためである。
プログラミングのような自由度には劣るが、
組織全体を作ることができるメリットは非常に大きい。
組み合わせ次第で、動き方の自由が得られるのはここからだ。
(ケース3)「4点セット」が揃っていて、更に専門性があるなら、作る側に回ればいい。
このケースは、おそらく最低でも中堅の入り口の年齢だろう。
事業の立ち上げの経験や、
医師・弁護士・会計士といった難関資格での活躍や、
研究成果が出てきているフェーズだ。
人によっては、引く手あまただけれども、どこか面白くなかったり、
待遇に不満があったりするという状況に直面している。
それは「新しいものを作る側に回れ」というシグナルだ。
面白いプロダクトかもしれないし、最先端の組織かもしれないし、
執筆かもしれないし、あるいは全く想像がつかない物事かもしれない。
このとき、1つの専門にとらわれず、思い切ってピボットしてしまってもいい。
決断の基準は、既存の路線をへし折って、心底面白いと思える物事や人たちと過ごせるか否かだ。
失敗体験を経ようと、独自の価値さえ作れればどうとでもなる。
学びの本質は、そこにしかないのだから。
これらは数多くの一次情報から導いたモデルケースに過ぎないけれど、
実際は「学んで動くこと」さえ出来てしまえばどうとでもなる。
知的生産の面白さは、そんな応用のきくシンプルさにあるんだよね。