データ分析から、AIエンジニア領域や新規事業立ち上げまで、どの関係者の間でも「ドメイン知識」という語が飛び交うようになってきた。
「ドメイン知識」とは、ビジネスで関わる対象となる業界や事業領域についての、基礎知識や専門的知見、あるいは業界固有の一次情報のカタマリのことである(カタカナ語を避けて領域知識と呼ぶこともある)。
これをわかっていると、ビジネスから「難しい」という言葉が激減する。
ドメイン知識には、どんなものがあるだろう。
例えば、製薬業界には固有のドメイン知識がある。
一般的な営業職ではなくMR(医薬情報担当者)がいる、薬機法(旧薬事法)という規制がある、医薬品製造工場にバリデーション(製造管理及び品質管理の検証)が求められる、新薬の開発が常に求められる…といった要素が挙げられる。
他には例えば、富裕層向けビジネスにも固有のドメイン知識がある。
富裕層のコアである社長は孤独であり本音を言いづらい、前向きな経営者ほど理屈だけでは考えず情に厚い、格式が高い人ほど三流四流とは関わらない(逆もまた然り)、勉強熱心である…といった要素が挙げられる。
こう見るとドメイン知識は「業界ごとの常識」だと言える。
製薬業や製造業やサービス業という「業界の切り分け」と、
富裕層かマス層か、男性か女性か…という「顧客属性の切り分け」に分解可能だ。
これらを知らぬ存ぜぬでは、失敗するのは目に見えているどころか、門前払いされる。
逆に言えば、これら固有のパターンを知っていれば、分野と立場に応じてうまくいくのも事実だ。
自分がサラリーマンのとき、製薬業界へ移ってFP&Aを経験するため、財務モデリングや製造業で対応できるドメイン知識を活用させてもらった。
自分が独立するとき、投資案件のデューデリジェンス(価値評価)事業立ち上げや、そのための統計モデリングと財務モデリングの技術開発から客先との成約までの経験、
このほか組織立ち上げの統括とグロースをリードした経験があったため、それらのドメイン知識を活用させてもらった。
その結果、仕事の依頼や執筆が、あちこちから有利に舞い込むようになったのは、言うまでもない。
これだけでなく、ありとあらゆる業界や分野に、固有のドメイン知識がある。
営業でも、執筆でも、金融業でも、製造業でも、デザイン業でも、士業でも、店舗ビジネスでも、教育分野でも、バックオフィスでも、
そうではなく独立してリピートと紹介を創出して継続的に成長するにしても、
その関係者かどうか一発でわかる単語や概念が、何らかの形で存在するはずだ。
わざわざ「何らかの形で存在するはず」と解像度を高めに書いたのは、
仮にカッチリと整頓されたドメイン知識がなくとも、バラバラな主観や暗黙知であるドメイン知識など、そこかしこに多々あるためだ。
知識の活用にあたり、それをかき集めて、真似しやすいと思えるところからでいいから、次々と実行していくのだ。
特に新規事業立ち上げや、単価・粗利の向上といったケースでは、バラバラな主観や暗黙知をどこまでカッチリに変換(=モデリング)して、横綱相撲を取っていけるかがカギになる。
ビジネスをやっている人が、
「この状況は難しいな…」「この分野は難しい…」
という「難しい」をクチにするのは極力避けるべきなのだが、
もしついうっかりついてまとうなら、原因は不備と不利の2つだけだ。
・ドメイン知識が不足していたりバラバラである(不備)
・そのドメインには自分が入り込む隙間や適性がない(不利)
これを厳しいものと捉えるか、チャンスと捉えるかは、自分で選べる。
チャンスとして前向きに用いたいなら、逆から捉えなおし、
・ドメイン知識不足やバラバラ状態を、得意技でカッチリとモデリングすれば解決できる(楽しく不備をなくす)
・別分野にピボットしたり、座組みで他力を得て、苦手なドメインを回避することで解決できる(楽しく不利をなくす)
という発想で、ファイティングポーズの取れるToDoを作り、実行すればいい。
現実解。
ドメイン知識そのものは、土台や基礎となる材料だ。
更にそのおかげで「これさえハズさなければ及第点」「これをハズしたら即退場」という〇×を逆算できるのだ。
基礎知識があり、正誤の判断を確実なものにすれば、自ずと難しさが激減していくのは、試験問題もビジネスも同じだ。
追記。
要は、ドメイン知識の活用とは「コバンザメ商法」とか「TTP(徹底的にパクる)」とか「ベンチマーキング」とか「取引事例」のことだ。
だからこそ、自分が楽勝できる分野や方法につなげると、失敗率を激減させながら成長可能性がグッと上昇するのである。
追記の追記。
いつも同じ失敗をしている人は、そもそもコバンザメとなるドメイン知識が足りていないか、あるいはそのドメインが向いていないだけだと納得しよう。
これに素直に気づいて方向を作り込むことが、成長する上で大事。
boxcox.net、遠藤武。