「自分が学んで研究してきた技術を使って、独立したいです!」という声を事あるごとに聞く。
科学技術の文法である統計学を応用し、新規事業を作ってターンアラウンドを果たした立場としては、
技術開発よりも、市場に「欲しい!」と支持される勝率のほうが、重要だと言わざるを得ない。
科学と技術を駆使した開発は夢があり、とても楽しい。
勝率のために技術開発を否定するつもりなど毛頭ないし、むしろ進歩や成長の中心に据えられるべきだと信じている。
だからこそ敢えて明確にしたい。
信じているからこそ、逆算して進歩や成長が見込めることに技術を適用し、市場を取る勝率を愚直に上げていくことが優先なのだと。
大きめの製造業において、
営業から研究開発・設計・品質管理・生産管理・原価企画・調達から経理までを含む、
サプライチェーン(バリューチェーン)全体と対峙していた立場として言おう。
いくら資金調達して独立しようとも、市場が取れない「作って終わり」であれば、
それは大きめの日系製造業のサラリーマンが失敗する流れと、何も変わらないと。
技術開発が軸となる起業は確かに夢とロマンがある。
論文とにらめっこし、統計モデリングの応用に奮闘してきた私が言うのだから、間違いないはずだ。
他方、研究開発や設計や新技術だけの夢とロマンで技術開発してしまうと、売れない。
市場が「欲しい!」「面白い!」とついつい手を挙げるコンセプトデザインとお客様の成功、
そして目の前に広がる大海という市場が、真っ先に必要なのだ。
それが曖昧模糊とした状態だったり、特定業界特化のサービスだったりすると、ありがちな「作って終わり」で止まる。
市場が尻すぼみになっている業界の場合はさておき、ゼロイチ立ち上げでやるべきことかどうかは、ちゃんと区別をつけなければならない。
大企業の場合、勝てなくとも失敗から学べばいいし、数あるプロジェクトのうちに埋もれていく。
事実をありのまま言うと、サラリーマンである限り、新規事業失敗でPLに計上された損失は全体の粗利でカバーして終わりだ。
一方でスタートアップベンチャーの場合、勝てない場合は人生ごと終わる状況など多々ある。
事実をありのまま言うと、市場で求められないものは何をどう頑張っても売れずに終わりだ。
また、実力差のないコモディティは次から次へと弱体化していくから、技術ではなくお客様目線が全てだ。
その状態で、1つの事業だけで戦うというのは蛮勇が過ぎる。
とすれば、綺麗事抜きにまずは確実に楽勝できる土俵で楽勝し、プレイヤーが一定以上いる市場をカバーしていくことが大切なのである。
現実解。
勝率を高くしつつ、自分のポジショニングを上げていくほうが、なんやかんやで悩みは消えていくし、そして売れてしまう。
もちろんニッチから入ってもいいが、特定の市場の悩みに特化しすぎて、小粒にならないように細心の注意を払うこと。
そもそも技術開発するなら、他の分野にユニバーサルに転用可能だから。
追記。
特に金融機関向けなど、プレイヤーが少ない業界向けサービスは伸びづらいので、要注意。
自分が過去に作った財務モデリングと統計モデリングを用いたFAS事業は、今だから正直に告白すると、
ニッチすぎてプレイヤーが少なすぎるがゆえにビジネスとしては途中で止まる(グロースしない)ことが見えていました。
もちろん、技術開発としては今もなおすごく意味があるけども。
追記。
これと別な時間と場所で、ちゃんとハイパーグロースを経験したので、結果オーライ。
boxcox.net、遠藤武。