「デジタル化が、DXやデジタルツインの名のもとに行われています。目の前の業務を片付けることはわかるのですが、どことなく上滑りしている感じが拭えません。デジタル化の本当の価値はどこにあるのでしょうか?」
そう問われたら、
「デジタル化とは、人間の負担を減らす仕組みであり、キャッシュフロー向上のために行う」
ことが根本的な価値だと答えます。
分析。
実のところ、ここまでで「デジタル化はキャッシュフロー向上のための仕組み」だというメッセージを明確に出している方は、今おそらくほとんどいらっしゃらないと思います。
というのも、各分野でやることがタコツボ状になり、横串を通すことができないためです。
「ITはIT屋さんがやる」という商習慣があり、「キャッシュフローは経理や経営企画が担う」という習慣があり、そこにデジタルツールの乱立と競争、デジタル化の情報偏在という市場の面倒ごとが加わり、二重三重の意味でわかりづらくなっているのが実情だからです。
実のところ、書き手や発し手の側も、ITだけならまだしも、CFやビジネス面全体まで含めて一気通貫で一次情報を知っている人は「ほとんどゼロ」というのが現状ではないでしょうか。
好意的に書けば「効率的に動くための分業化」なのですが、それが全て裏目に出てしまっています。
令和のデジタル化では誰もがデジタルツールを文房具のように使う必要があり、分業化がかえって物事をわかりづらくしているのです。
既にお気づきかもしれませんが、ここまで到達する上で「デジタル化が理解しづらかった理由」の正体は、この断片化・孤立化であり、分業化の負債によるものです。
デジタル化周りのテクノロジーの理解もさることながら、ビジネス側での理解と対応は、商習慣と市場のせいで妨げられていると言えます。
現実解。
「デジタル化はそもそも資本主義の徹底である一方、人間の負担を減らし、一人一人が人間に少しでも優しくなる」という矛盾があります。
綺麗事抜きにすると、競争はゼロにできません。
とはいえ、無駄な競争の要素を出来るだけ減らし、得意技で物事を進めることは、各人の創意工夫で可能なはずです。
小学校の標語のようですが、「思いやり」を持つことが、競争ばかりが先行してきた資本主義に入り込んでいるのです。
競争にメラメラ燃える人も、自分の本懐を淡々とこなす人も、どちらも存在していていいのです。
そんな矛盾を乗り越えることは、情報の計算処理のではなしえません。感情や主観という答えがそこにないからです。
デジタルを突き詰めていくと、実は極めて人間臭いアナログに行きつきます。
病に客観的に向き合うことは医療で実現できても、病と主観含めて付き合うことは、人間的に向き合う以外にないのです。
超アナログな視点で眺めなおして、そもそも自分にとって本当に大事にしたい価値は何かということを、問うてみるといいのではないでしょうか。
デジタル領域でそのような問いを立てる人がそう多くない飲食を持っていますが、これは実は問えば問うだけ有利になるスキだと付け加えておきます。
boxcox.net、遠藤武。