価格と品質を統計モデリングで分析し、
その上でBtoBもBtoCも問わず複数の業界で値付けと品質の実態を知ったが、
価格の裏側には、果てしない実力差がある。
シンプルに言い切ろう。
「物量が多い場合」または「価格が高い場合」は、「カスタマーサクセスがある」という事実を挙げられる。
(詐欺・犯罪や、情報格差を乱用した煽りケースは、そもそもカスタマーサクセスを自壊させているため、ここには含まない。)
一杯のコーヒーを例に出そう。
コンビニのコーヒーは、製造や流通や販売について物量の多さをカバーできる高品質の仕組みがある。
そのため、価格が安いというカスタマーサクセスを出しても、薄利多売であっても、セット売りやついで買いがあり、さほど痛くもかゆくもない。
ハンドドリップのスペシャルティコーヒーは、物量は小さいものの、味やオーナーのポリシーで高品質なカスタマーサクセスを担保している。
そのため価格を高くしても、「欲しい!」と売れる。
ここから逆算すると、
「価格が安く、大量に流通するものは、物量確保のための高品質なSCMをカバーしている(値段が安いこともカスタマーサクセスである)」
「価格が高く、少量しか流通できないものは、価格が高くとも『欲しい!』と手が上がるカスタマーサクセスのある商品内容である」
と言い切れる。
ここから一番重要な洞察は、
価格を高くして粗利を増やしたい場合も、
価格を安くして薄利多売したい場合も、
商品のカスタマーサクセスが全てだという事実だ。
職人として「これは良いものだ」というだけではカスタマーサクセスにはつながらない。
お金をサイフから出す側が受け取る機能と情緒のメリットと、その流通ルートありきである。
また、そもそも値段が安く、売れてもナメられるという場合は、カスタマーサクセスがないと言っていい。
私が相談される内容として、粗利を良くするための価格改定やカスタマーサクセスの強化があるが、
現時点である程度の品質やカスタマーサクセスがあり、具体的に「欲しい!」となるお客様がついている場合、粗利強化はそれほど難しくない。
価格を上方向に改定すれば、お客様がそのままついてくるか、一部入れ替わるだけだ(飲食などBtoCのケースがわかりやすいだろう)。
逆に、値段が安く下請け状態が長年放置されていて、品質やカスタマーサクセスが明確になっていない場合、ゼロから学びなおす必要がある。
価格を上方向に改定し、その上で受注力をつけ、高額に見合ったカスタマーサクセスを徹底し、既存のお客様を事実上捨てる覚悟が必要となる(特に製造や制作を伴うBtoBのケースに多い)。
単なる資源価格上昇による「値上げ」は全く別として、価格の裏にはこのような仕組みがある。
業界に応じた粗利の確保も千差万別だが、価格差があっても、世の中に流通する以上はカスタマーサクセスありきなのである。
現実解。
安易な値下げがそもそもダメと言われ続けているけれど、
根本的に言えば「値下げカスタマーサクセス」が可能なケースは、規模の大きい強者の発想だ。
目の前で見るものが安値攻勢ばかりだと、ついうっかりそちらに引っ張られてしまう。
価格も品質も高いものに触れておくことは、個人でできるサクセスの高め方だと覚えておこう。
boxcox.net、遠藤武。