「起業やゼロイチ立ち上げの際、『安値は絶対にダメ!』という理由はなぜですか?確かに利益が出づらく忙しいのは経営者としてしんどいと思うのですが、遠藤さんの忌憚のない本音ストレートのご意見を聞かせて頂ければ幸いです。」
安値からゼロイチで起業してしまうと、思っている以上に大変です。
否、大変という言葉では足りません。
数多くの一次情報から、一般論から最悪のパターンを出しましょう。
そのあとに、「どうやって難局を打破していくか」について述べていきます。
一般論として、
特に小規模な企業(年売上高1億円未満)の場合、
安値が引き起こす嫌な現象は、
・安値のため付加価値や品質や利益が薄く、不本意ながらも下請け側に回らされてしまう
・利益の出ない下請けなので、自分の市場も独自性も進化しない
・市場も独自性も強みもないため、便利屋扱いされ精神的も物理的にも消耗する
・精神的にも物理的にも消耗して、経営者の時間がなくなる
・時間がないため、ろくに本も読めず、経営者の勉強不足が祟ってしまう
・そもそも経営者が勉強不足のため、何十年続けても組織のレベルが低いままである
・レベルが低いことが当たり前になってしまい、素直に話を聞けなくなる
・素直さがないので、経営者がハラスメントで憂さを晴らしたり、いちいち一言多かったりと、立ち居振る舞いや素行や性格が悪い
・立ち居振る舞いや素行や性格が悪いため、安易に下に逃げる負けクセがつく
・下に逃げるため、採用してもすぐ人がやめてしまったり、貴重なアドバイスを素直に聞き入れられない
・聞き入れられないため、勉強不足・知識不足・行動不足のままである
・不足を誤魔化すかのように、言い訳や批評ばかりが得意な組織や経営者のままである
・言い訳しているゆえに、安値や低付加価値である程度上手く回ったとしても、守銭奴と化してしまう
・そもそも相手にされなくなり、お金不足か人手不足で仕事が回らなくなる
・そもそも自分の立ち居振る舞いの悪さを反省できず、運が悪くなる
・近くにいると、人を不幸にしたり、人のやる気を削いでしまう
・最悪の場合、そのように動く経営者は、突然死んでしまう
という状況が挙げられます。
規模が年売上高1億円以上でも起こりうるものはありますが、
概ねこのような具合です。
「遠藤さん!ちょっと厳しすぎます!」
と言われそうですが、
これらは全て実際に見てきた一次情報や、
相談を受けて把握してきた内容です。
まずはその事実を、データとして受け入れるしかないのです。
更に言うと、このような事実は往々にして、どこか遠くに隠れてしまいます。
というのも、
例えばコンサル会社の場合「そもそも本当に売れない企業を相手にしたらお金にならず、ノルマを果たせない」のが事実であり、
例えばターンアラウンドマネージャー(事業再生請負人)の場合「そもそも不採算であれば閉じるべき」のが事実であり、
一般論としてそれ以上に進むことは、あまりないためです。
一般論ばかりだと退屈で、小規模な企業さんは助かりませんね。
一般論から離れ、
「どうやって難局を打破していくか」
を見ていきます。
見ての通りですが、もし上に書いた項目について、
「やばい!これって自分のこと??」
と思えるなら、その人は理屈抜きに運が良い人です。
他人ごとではなく、自分ごとにできているためです。
この状態から高値に転換して利益を出してキャッシュを残すには、
腹を括って、
既存のつながり、顧客、ビジネスモデル、立ち居振る舞いなどを、次々に変える必要があります。
背中を蹴飛ばされてでも、本音に素直になって原点に立ち返り、
出来ることから確実に、根本からグレードを上げる必要があるのです。
自分ごとにできている時点で、そのチャンスのドア前に立てます。
短気な人にはまどろっこしく思えるかもしれませんが、
規模が小さい場合、驚くほど素直に、できることから確実に変えていく方が、
遠回りに見えて圧倒的に早いのです。
物事が、年月をかけて絡まってしまっているゆえに、
3歩進んで2歩下がる現象や、ありえない失敗が、必ず多発すると思います。
平地で転ぶことも多々あると思います。
それでいいのです。
それくらいしてでも、本当に変わりたいと思えるくらいの、
ついつい背伸びして、どことなく青臭い「かわいげ」のある、本音の理想が大事なのです。
何もないところで転んで、素直に学ぶ姿こそ「かわいげ」です。
実のところ、
私がFAS事業(財務アドバイザリー事業)をゼロ立ち上げしたとき、レポートの体裁も財務モデリングもまったく作られていない中、
ゼロ立ち上げのコンセプト段階で新規に依頼が舞い込みました。
相手は、インフラ系最大手企業のファイナンス部門です。
本当のゼロイチで最初に出したバリュエーション(事業価値評価・投資価値評価)のレポートは、
Excelの財務モデリングもないパワーポイント数枚物でしたが、
ゼロイチの過程の取り組み含めてご評価をいただき、継続的な関係を築くことが出来ました。
これが安値の下請けなら、100%ナメられて終わりだったでしょうけれども、
本音で挑戦していて、青臭さや「かわいげ」という伸びしろが見えたからこそ、
依怙贔屓を頂いたのだと確信しています。
当時の所属先は、金融危機の煽りで経営難に陥っていたのですが、
この依怙贔屓が突破口となって存続した事実を付け加えておきます。
現実解。
規模が小さい場合、かわいげはとても重要です。
理屈抜きに、依怙贔屓が得られるからです。
人を雇っているのに、フリーランスの最上位で果たせる程度の規模や時間感覚に及ばないなら、
思い切って素直に、今やっていることの逆を取り、
「理屈や一般論だけに逃げず、かわいげを優先させる」
「その結果、協力者やお客様に向こうから手を挙げてもらう」
という、自分の動きや感情ひとつで変えられる要素を取るほうが、圧倒的に楽なのです。
営業が下手なら、堂々とかわいげを発揮して、優秀な他人の敬意ある依怙贔屓で協力してもらうほうが、
営業代行会社やマーケティング代行会社という、名前だけの凡人集団に任せるより、圧倒的に成約が楽に決まります。
商品開発も、企画も、イベントもこれと同じで「どうしてもあなたを助けたい!」という、
敬意ある依怙贔屓を、かわいげで集めればいいのです。
理屈やスキルがないなら、かわいげという土俵で勝負するだけでいいのです。
追記。
組織の中で働いたことのある人や、
部活やサークルの先輩後輩という人間関係を経験している人なら、
上下関係で依怙贔屓されることで、
上に引っ張り上げてもらったことがあるはずです。
そのときのトリガーは、決まって「かわいげ」のはずです。
これは独立した場合も全く同じことが言えます。
規模が小さいときも、規模が大きくとも、
かわいげがあり「あの人は憎めないから助ける」と言ってもらえたら、
それだけで上にあがっていくことができます。
理屈だけだと出てこない発想かもしれませんが、
理屈だけで停滞を感じるなら、
理屈を捨てて「かわいげ」で攻めるというのは、
基本中の基本です。
普段厳しい人がふと見せたギャップが、
たまらなく愛おしくなるというのは、
全ての機能を超えてしまう、情緒という武器なのです。
特に、頭の良さや理屈を極めたような職業や立場の場合、
「かわいげ」があると、なおさら理屈が際立ちます。
boxcox.net、遠藤武。