上場は資金調達しやすくなるメリットがあるが、
「上場ゴール」と揶揄されるように、
中途半端な私利私欲で終わることなどままある。
ものすごい極論を言うなら、
一定の座組みで需要先と資金元を掴んでおき、
その上で広報の見せ方を工夫しつつリスクを減らせば、
強引に上場させることも理屈上は不可能ではない。
とはいえ、途中から需要が削れて、一気に崩れてしまえばそれまでである。
不自然なものや、価格が高すぎる割にニッチなものは、根本的に普及せず突然消えていく運命にあるが。
また、上場したとなると、
既存の資本市場のプレイヤーと関わる必要がある。
とすれば、
市場の読みや配当の見積もりが甘いとか、
内部の仕組み構築が甘いといったように、
株主からいろいろせっつかれることになる。
時価総額がそうとう大きいならさておき、
上場ゴール程度の規模であれば、
出資元のいいなりになるまでがシナリオだ。
かつて私が所属していた企業は、これをわかっていた。
上場ができるような体制を対外的に組織図で作って匂わせながらも、
率直に申し上げて、人材の質がヘナチョコで年収も低く、人事も悪い意味で好き勝手、
肝心のビジネスモデルはコモディティに気が生えた程度の安値サービスの一本槍、
どう擁護しようとも上場などしようがない組織品質だった。
そうこうしているうちに私は他社にスカウトされてその組織を去っていったが、
その状態でも売却先が見つかったとの話だった。
とはいえその後ほどなくして、経営陣が入れ替わるのだが。
何が言いたいのかというと、
さして広がらず横綱相撲が取れないのに、
無理に上場しようとするのは、意味がないということだ。
もちろん上場を否定するつもりは、毛頭ない。
便利な手段であり、信用力が得られる。
一方、上場させる圧力で不利を強いられる必要もない。
ブランド品を爆買いするように、
目を血走らせて上場を目指したとて、
良いことはないのである。
また、上場を生業にする業界を養う義理などない。
俯瞰的に見ていくと、どのようなプレイヤーがあり、
自分にとって何が重要かが見えるということでしかないのだから、
自分にとって何が重要かを決めれば事足りる。
現実解。
お金に色はついていないと言うが、
資金調達というフェーズの色分けを、自分に不利な舞台でやる必要はない。
「上場ゴール」ではなく「ゴールを作り続けるための上場」なのである。
ちゃんとスタッフとお客様とを見て、
世の中に「あってよかった!」と言ってもらえる爽快な価値を残すことが大事なのだから。
boxcox.net、遠藤武。