データドリブンと言っておきながら、
データドリブンの世界そのものが分断している。
数学・物理学・統計学と、
プログラミングと、
Excelを使う分析と、
BIツールを使う分析が、
整頓して語られるケースは今ほとんどない。
これは市場が分断しているためだ。
北米や欧州の大手企業は、
データ分析といえば、
SQL(データベースを扱うプログラミング言語)を使うことや、
Python、R言語、VBA、場合によってはc++といった、
基本的な計算機科学(コンピュータ・サイエンス)の素養を想定している。
実のところ外資企業では、
いわゆる管理会計とか経営企画の分野でも、
「SQLを使えないとデータが扱えないでしょ?だからSQLは必須ね」
「データベースを使えるなら、それらで要約したデータを使ってPythonやRで分析・予測してね」
という前提が出てきてしまう。
アマゾンなんかが好例だ。
自分がサラリーマン生活で最後に経験した外資企業も、
この流儀に則っていた。
「うちはデータ処理企業だから」
「仕事は99%自動化して楽してね」
「データは雲(クラウド)の中にあるよ」
普段はアメリカにいてオンラインで対応してくれた上司が、
英語で口癖のように言っていたことだ。
FP&A(管理会計・経営企画)から、
データ分析を生業にしたのは、
自分と上司の共通点だ。
このような切り口は、日本の企業だとまだ少ない。
「データドリブンに、数学屋や理論物理学屋はいらない」
そう喝破したデータ経営で知られる日本の小売企業がある。
個人的には、このように喝を入れる言葉は大好きだ。
大好きだからこそ事実を言ってしまうけど、
これはあくまでExcelを使って、
業務を標準化しただけだ。
日本の企業として、
今の業務水準が世界と比べてあまりに低いとわかっているから、
そうやって喝を入れているのである。
数学や理論物理学から派生して、
数理統計学を使う企業は、
標準化を超えて、
事業が高度化しているから、
数理統計学を使わないと追いつかない。
これは北米や欧州のやり方だ。
それだけ何でも自動化しているのと、
新規事業や技術的基盤を作っているからこそ、
数学や理論物理学や数理統計学が必要なのだ。
Excelで済む程度の仕事は、
どちらかというと投資銀行や、
コンサルティング会社とか、
新規事業立ち上げのように、
キャッシュフローを評価するのがメインの仕事の場合だよ。
一般的な組織の場合は「脱エクセル」が今の基本だ。
少しでも関わったことがあれば、
一発でわかっちゃうんだけどね。
「データドリブン=数学・理論物理学・数理統計学」だけしか経験のない場合、
「えー!やっぱり理工系はダメなのか…」と思い込まされてしまう。
これは実は純粋にビジネス側の人がハッパをかけているだけだ。
明らかにホラだとわかってやっているんだよ。
むしろ、数学・理論物理学・数理統計学がメインの人が、
Excelを使ってできることの実際や、
ERPやS&OPのような業務システム系の概念を知ったら、
確実に理工系の人は勝ちに行ける。
ビジネスがそれを基準に回っているんだもの。
もっと分野横断的に飛び越えなくちゃ。
データドリブンはまだまだ青臭い。
だからこそ弱点だらけであり、
その弱点を少し拾い上げて解消するだけで、
計り知れないメリットを得られるんだよね。
追記。
『ボックスコックスネット』
というサイト名も、
統計学で一番お世話になった手法から取っている。
分断があった弱点を統合するだけで、
リーマンショックのときにとても助けられた。
boxcox.net、遠藤武。