大学受験で、地理と世界史を学んでいた。
両方とも文章で記述する必要があったので、
じっくり鑑賞するかのように、
イメージを巡らせて参考書を読んでいた。
そもそもこの2科目を選んだのは、
「世界地図から、世界の複数の側面を束ねられる」
と直感していたためだ。
SFやファンタジーの世界観になぞらえよう。
表面と裏面だとか、現実世界vs異世界がある。
並行世界が、双子のごとく存在する。
地理と世界史のはざまから、
時間と空間を乗り越える妄想をしていたが、
これは実は妄想ではない妄想だったと言える。
当時の読み方を思い返す。
読み進めていると、地理の中身には「地誌」と「系統地理」があると知る。
「地誌」:特定の地域についての説明や研究のこと。
日本の産業や文化、アメリカ大陸各国、アジア各国、ヨーロッパ、豪州、アフリカ…のような、
地理と聞いて「なんとなくクイズ番組で出題されそうな内容のイメージ」が、地誌である。
これはこれで、路線図を見て覚えるのが好きだったので、苦にならなかった。
「系統地理」:人文地理と自然地理という領域を束ねたもの。
人文地理がカバーするのは、経済や人口や文化といった、社会全般の仕組みだ。
自然地理がカバーするのは、気候や地形や土壌や植物といった、地球全般の仕組みだ。
人文地理はそのまま、経済学や歴史学や文化人類学とつながる。
これは誰でもイメージしやすいはずだ。
自然地理もそのまま、地学(地球科学)につながる。
大学受験の理科では地学を独学したが、
高校で授業を履修した物理・化学・生物の理科3科目が、
地理と地学でお互いに糊付けされる形で、
世界の複数の側面を束ねることができた。
化学の授業でSiO2(二酸化ケイ素)はガラスの素材として教わったが、
溶岩の粘り気や火山の形に影響を与える点からは、地学や地理の話題だ。
また、同じく水晶もSiO2だが、水晶はガラスとは異なって結晶しており、ガラスより硬い。
これに関連して、水晶に電気を流す(=電圧を加える)と振動する。
この振動を電気に変えて取り出すことで、規則性のある電気信号が得られる。
電波やCPUの周波数とはこのことだ。
この原理は、小学生から中学生にかけて無線に興味が出て、資格を取って知った。
いま触れているコンピュータもスマホも、クォーツ式時計も、この原理が必須だ。
こうやって並行世界を辿る鑑賞を重ねると、話は尽きない。
話を、地理に戻そう。
水晶のかけらに電気を流すことに始まり、
電波を飛ばして通信できるようになり、
さらにコンピュータが急速に発達した。
そのおかげで地球を容易に観測し、
立体的に地図を捉えることが可能になった。
高校地理で知る言葉で言えば「リモートセンシング」が当てはまる。
スマホのGPSも同様だ。
これらを活用することで、
インフラ整備、街づくり、都市計画、防災、農業、環境調査など、
地理がさまざまなデジタル領域に応用されている。
アナログとデジタルをお互いにそっくり結びつけるゆえに、
もはや地理という次元を超えていると言っていい。
現実解。
デジタル化、DX、デジタルツイン…と、
いずれも「答えのない物事」かのように口々に言われる。
実は正体は、基礎分野や応用分野の組み合わせだ。
分野のはざまに放り込まれて、
「答えがない」と言わされるのなら、
まずは高校レベルや大学受験レベルの知識や、
世の中の国家資格の内容を、
絵画や音楽のように鑑賞してみよう。
それだけで十分なリターンがある。
追記。
インフラ整備、街づくり、都市計画、防災、農業、環境調査のデジタル化は、
大学で学ぶ分野で言えば、土木計画、都市工学が当てはまる。
これらは統計学を軸に展開される分野だ。
DXの名の下に分野の特徴が見えづらい場合、
「大学や大学院の、どこの学科で教えられているか?」
という視点で鑑賞すると、全体像がわかりやすくなる。
boxcox.net、遠藤武。