「統計学は数学ではない」という言説がある。
単にアンケートデータ処理や予測工程の「運用者」であれば「Yes」だ。
検定や回帰分析や多変量解析を用いるだけの場合、統計学の習得は「工学分野の現場オペレーター」的な学習にとどまるためである。
これは古典的な純粋数学や自然科学や工学のような、原理原則を学び、問いを立てて解く…にはほとんど行きつかない。
私が大学在学中に運営に関わった土木の国家資格もこれに類していた。
(国家資格はさておき、土木は数理的手法や統計学の開発に立脚しており、問いを立てて解く面白さがあるのだが。)
一方、統計学について基礎も応用も理解して「作り手」の立場になるならば、「統計学は数学ではない」はその場で「No」に転じる。
数学の論理の扱い方である集合論と、大学数学の基礎である解析学(微分積分とその系統化)や線形代数(連立方程式の解法や行列演算)に始まり、
解析学のひとつにある測度論(ルベーグ積分)を経て確率論に進んでいくことになる。
純粋数学の基礎や、その近辺の物理学や工学の知見が必須になるためだ。
MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ)法やブートストラップ法のように、物理学でも用いられる手法がある。
実際に船舶投資について、これらの手法を用いて評価モデリング構築を試み、出来る限り限られたデータを用いることを私も経験した。
ずっと数学や物理学や工学のトピックに触れていられたので、天国のような仕事だった。
現実解。
結局は学びや立場の深さで「問いを立てて解く」に行き着く。
それゆえに、統計学の実情をどのような深さで把握しているかによって、捉え方も変わる。
数学専攻や物理学専攻の出身であっても、知見が断片化・タコツボ化している場合、統計学を「運用者どまり」と誤認するケースもあるから注意しておこう。
追記。
とはいえ、タコツボ化しているからこそ作れる価値もあれば、シンプルな統計手法が思わぬ解決をもたらすこともある。
重要なのは、基礎を大事ににしてちゃんと掘り下げられるスタンスという事実をお忘れなく。
ボックスコックスネット、遠藤武。