「遠藤さんはアナリストをやっていたということは、株式投資や為替といった市場の分野の投資をしているのですか?」
これについて素直に即答すると、Noである。
というのも、これらは市場の動きを自分でコントロールできず、
他人に合わせる必要が出てしまい、かえって面倒なためだ。
アナリストとして市場を分析して統計予測をしながらずっとウォッチしていた、
株式市場・為替市場、原油や穀物といった商品市場など、
金融や商品(コモディティ)の相場を扱う市場は、規模ゆえにメジャーに思われることが多いが、
実は金融市場は大多数にとってはマイナーなニッチ市場である。
というのも、大多数の人は、これらの市場で影響を持つことなど到底できないためだ。
それどころか、政変や騒乱が起こると、影響力を持っていたはずの層も翻弄されてしまう。
つまり、参加する時点でマイナー落ちを強いられ、どこかに必ず不利が混ざり込んでしまうのである。
単に「規模が大きいからメジャーだ」となんとなく刷り込まれると、
金融機関のマーケティングでマイナー市場に取り込まれてしまいかねない。
具体的に見ていこう。
日本に住んでいると、資源は輸入に頼らざるを得ない。
原油価格も為替も、その値動きは、自分が直接働きかけて動かすことができない。
金融市場は大きすぎるゆえに、一般的な個人が入り込んで対応するというのは厳しい。
関わっている人の大多数は、金融機関の勤め人である。
金融危機が起こると、全員が不利を被る。
その不利も人によって様子が異なり、
金融機関のサラリーマンはクビになれば終わりだが、
金融市場に個人でお金を突っ込んでいたら価値低下でお金が消える。
個人のほうが損する割合が大きいのだ。
正確にはごく少数が利益を得るのだが、大多数は損をしてしまう。
このグレーゾーンが市場の事実なのだ。
「お金の教育」という言葉が、ウェブ上やSNSで取り沙汰ざれるが、
この本質は「キャッシュフロー(≒現金収支)を積み増していく」ことにある。
「投資しろ!」という謳い文句は、
投資が一般にキャッシュフローを増やすからこそであるが、
株式市場も商品市場も、操作しがたい他人の意思の集合体で動きが決まるため、
実のところ既存の市場への投資で、面倒ごとが増えてしまうまでを考慮に入れる必要がある。
そもそも相場を動かせたら相場操縦という不正行為であるのだが。
ということは、
他人の意思の集合体がぼんやり操作する金融市場ごとき変に気にかけずとも、
自分にとって有利な流れ(=自分の市場)を用意しておくことのほうが重要なのだ。
経営の話をしてしまおう。
アナリストという、市場の動向を読み取って価格や経済指標の予測を行っていた立場として、
かつ企業の売上や利益やキャッシュフローの分析・予測を行っていた立場として、
正直に言ってしまうと、
事業運営やマーケティングからすれば、動きを予測や構築できない時点で、明らかな悪手である。
これは言うなれば、あなたが社長だとすると、
極めて優秀だがムラっ気があって扱いづらい部下を抱えていたり、
金払いが今月は良いが次月には突然半額に値切ってくる顧客を抱えているようなものだ。
自分を不利に追いやる人材や取引先とは関わるべきではない。
基本中の基本だ。
金融市場や商品市場、ないしそれに近しい市場(不動産など)は、
経営レベルで見たらありえないほど基本中の基本が脆弱で、不利と常に隣り合わせなのである。
ではどうすべきかというと、自分独自の市場で活躍すればよい。
その際に、資本主義の仕組みを活用するのだ。
具体的には、自分の本業や得意技とリンクしたところから、
企業経営者など富裕層向けに「欲しい!」と言ってもらえるビジネスを展開するのだ。
富裕層向けと聞いて、株式投資や不動産や高級品しか話題が出てこないというのは、勉強不足だ。
医療・健康、組織活性化、レジャー、食文化、美術、教養、スポーツ、趣味など、ピン!と来てもらえる要素は無数にある。
それらを一点突破するか組み合わせるかで「欲しい!」と言ってもらえれば、
プロとしての実力があれば、実のところそれだけである程度のビジネスが出来てしまう。
あるいは、BtoCビジネスでピン!と来てもらい、売上をシェアする形を取ったってよい。
自分の市場が、終わりのない成長を作るのだから。
現実解。
規模が大きいゆえに数多くの人が関わっているために、
その他大勢に追いやられる金融市場にこだわるよりも、
自分の得意技に対してピン!と来てもらい、
自分のニッチな市場が出来ることのほうが、
かえって自分をメジャーにしてくれる。
boxcox.net、遠藤武。